第38話 悪病(2)

 ガーは、契約の催促のためにアーリを訪ねた。その時、アーリは、ガーの取り巻き美女たちの一群と戯れて居た。ガーは、宝物の確認作業は進んで居ないを確認した。それはつまり、ガーの懸案であるユリ招聘に、動く気配は無いということだった。ガーは、そんなアーリに内心では、苛立ちを覚えたが、アーリは、ガーにとって、今だ賓客(ひんきゃく)である。


 そこは怒りを抑えて、アーリを丁重に扱うことにする。


 開け放たれた部屋に体を入れたが、アーリはガーに注意を払わず、ガーの取り巻き美女たちとの遊びに夢中になっているままだった。ガーは、注意を向けさせる為に、開け放たれたままのドアをコンコンと叩いた。


 アーリは気が付かなかったが、上役でもあるガーの来訪に対して身を低くして、これを迎えた。急に遊び気の無くなった女たちの様子から、ガーの来訪に気が付いたアーリは、ガー来訪と意図を瞬時に察して、遂に来たかと言った諦めの表情を女たちに見せると、同じく遊び気を失い、ゴロンとガーに背を向けて寝転んだ。そして、反駁を示す様に、アーリの背は、ガーに向き直ることはなかった。


 なんでやす? あっしは、行くのは止めました。宝物なんか、無くて良い。ここで面白可笑しく暮らす方が、楽なことに気が付きましたのでね。


 そう言いつつ、アーリは背を向けたまま、尻を掻いた。


  ガーは、アーリの不誠実には、取り合わず、理路を尽くして説明に走る。


 貴方、契約は既になされているのです。キーパー様に貴方の不誠実を告げても良いのですよ?


 ガーは、今は使えない空手形を切る。威力で押し切る算段だ。しかし、アーリは、どこ吹く風と言った感じ。威力は、空振りだ。アーリは、応えて言う。


 天使と悪魔の確執を、ご貴殿は知らぬまま、あっしが悪魔だと、あの天使に告げた様ですね。そして、天使は暴走し、その暴走を収めるために、ご貴殿は、あの天使を毒を使って廃人にされたとか。怖い、怖いw 厄介な天使は、今や木偶の坊。あっしに、恐れるものは何もない。


 アーリは、薄ら笑った。


 ガーは、察した。他人(ひと)の口に戸は立てられぬ。取り巻き女たちの誰かが、詳細をアーリに漏らしたのだ。

 

 あたくしには、まだ手はございます。本当に財宝は要らないのですか? 願いを取り下げても良い良いのですよ。これだけの財宝があれば、貴方は生命ある限り安泰だ。ここに居ればと貴方は言うが、そもそも、あたくしが、それを許すとお思いですか? それが分かるなら、早くあの子を迎えに行って下さいな。あの子の母のエリや理神のオルが作った壁に苦労しているのでしょう。可哀想に。そして、心配だわ・・・。さあ、早く、早く!


 ガーは、アーリを急かした。


 しかし、アーリは素知らぬ顔である。


 ガーは、最悪の場合、対象を廃人化してしまう悪病の霧を使うことに抵抗を感じながら、アーリの自由意志を挫き、目的完遂に至ため、悪病の霧の使用を、黙して思い定めるのだった。

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