第7話
アキヒコは、仕事が終わって、品川駅まで帰ろうとした。
その時は、外は、雨だった。
嫌だなぁと思った。
傘、忘れたなぁと思った。
もう、2024年12月になって、世間では、もう、クリスマスの雰囲気が、近くなっているが、雪ではなく、雨だった。
そもそも、雪だったら、「ホワイトクリスマス」で、少し、ロマンティックだけど、雨なんてロマンティックな雰囲気一つすらないと思う。
トレンディドラマで、織田裕二・矢田亜希子主演ドラマ『ラストクリスマス』なんて放映されていた。
だが、アキヒコは、そんなドラマを、当時、付き合っていた彼女がいたが、「そんなドラマは嫌だ」と言い放っていた。
そのドラマは、2004年10月~12月に、フジテレビジョンで、放映されていたが、早いもので、もう20年が経過していた。
昨日は、日光まで取材に行った。
浅草駅から東武鉄道で、日光まで行った。
日光で、活躍している歌手の取材に行った。
昨日は、ミツキと一緒ではなかった。
ミツキは、昨日、箱根まで取材に行っていた。アキヒコは、日光で猿軍団を観たいと思ったが、忙しくてすぐに帰ってきた。
仕事だもんな。
ミツキは、どうだったのかな、と思った。
「フジサカさん、どうしたのですか?」
と、玄関で雨宿りしているアキヒコに声をかけた。
「雨宿りしているんだ」
と、アキヒコは、言った。
「だったら、フジサカさん、私の傘に入ります?」
「いや、オレの方が、背が高いもん」
と訳の分からないことを言った。
アキヒコは、172.3センチ。
ミツキは、160センチ。
身長が。
「フジサカさん、が、傘をさして、駅まで一緒に歩きましょう」
と言った。
それで、アキヒコは、照れていたが、職場では、アキヒコ以外の社員は、帰っているようだから、アキヒコは、ミツキと一緒に帰った。
雨が、ざあざあ降っている。
みんなも、品川駅まで向かっている。
この光景は、何だ?
と思った。
映画とかドラマ、漫画と同じシチュエーションではないかと思った。
会社から駅まで歩いて、10分である。
そして、アキヒコは、道を歩いていたら、ミツキの歩いている方こそ、クルマの車線に近いことに気が付いた。
「フジムラさん」
「はい」
「こっちの方、歩いて」
と言った。
そして、前を歩いているのは、たまたま、同じ大学生のカップルだが、クルマの水飛沫にあたって、「キャッ!」と彼女は言っていた。
その前のカップルの女の子は、コートが少し濡れていた。
アキヒコは、ミツキが、水飛沫を浴びて、風邪などを引いて欲しくないと思った。
良かったなぁと思った。
「フジサカさん」
「はい」
「前の女の子、可哀想ですね」
「あれは、男の子もいけないと思うんだ」
と言った。
カップルのカレシは、茶髪で、明るい感じだが、少し、彼女が、彼氏に怒っている。
「少し、男の子が、配慮が足りないと思うんだ、オレは」
と言った。
だが、それは、アキヒコもいっぱいあった。
配慮のないと思うことが。
駅前に近くなると、みんな、寒そうになっている。速足になって帰宅しようと急いでいる。
そして、駅前のタクシー乗り場には、人がいっぱいいる。
「今日、タクシー乗り場、人が多いですね」
「そうだね」
と言った。
それにしても、どうして?と思った。
駅に近くなると、人が、どんどん増えている。
「本日は、京急電車で、人身事故がありまして、JR横須賀線、上野東京ラインで、振替輸送をしております」
とアナウンスが、流れた。
「フジサカさん」
「はい」
「今日、上野東京ラインが、いっぱいになると思うよ」
「うん、そうだね」
「京急電車の横浜駅と東神奈川駅の間で起こったみたいだよ」
と言った。
スマホで、交通情報を観たらそうなっている。
「今日は、上野東京ラインで、帰ろうか」
と言った。
京急電車の品川駅から上野東京ラインの品川駅に向かった。
緑色の上野東京ラインが、プラットフォームに入ってきた。
アキヒコと、ミツキは、二人で並んで、入った。
そして、その時、後ろから、10代の男子高校生が、入ってきたとき、ミツキは、身体があたって、アキヒコの腕につかまった。
この時、アキヒコは、ドキッとした。
なんせ、ミツキの腕が柔らかいと思った。
ミツキは、腕を話そうかどうしようか迷っていたが、どうも、腕から手を離さなかった。
アキヒコは、ミツキの甘い香りに、喉が少しカラカラになっていた。
しかし
ーこの会社の同僚になんてことを抱いているのか
と思うとできなかった。
そして、上野東京ラインは、東海道線を、品川駅から横浜駅に向かって出発した。
そして、アキヒコは、腕から手を離さないミツキに何て言えば良いのかと思った。
アキヒコとミツキが乗っている上野東京ラインの快速小田原行きは、しばらくして、横浜駅に着いた。
アキヒコは、まだ、腕から手を離さないミツキを「もう、いいだろう」と言えないと思ったその時、ミツキは、JR横浜駅で「今日は、帰りたくない」と言って、ミツキは、アキヒコのハイツで泊まった。
雨の日の映画の世界を乗り越えたとアキヒコは、思った。
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