第4話

   

「おお、凄いぞ! さすがは木暮、まるで小鳥マスターだな!」

 興奮する田山を落ち着かせる意味で、僕は努めて冷静な態度を示す。

「ええっと、確か被害者は、女性専用マンションで一人暮らしだったんだよね? だったら彼女一人で『タダイマ』と『オカエリ』を言うのは、ちょっと変じゃないかな?」

「そう、だからこそ大きな意味がある! なにしろ……」

 田山は落ち着くどころか、むしろさらにたかぶっているような口調だった。

「……被害者の名前が『麻衣子まいこ』だからな。つまり『タダイマ、マイコ』の部分は彼女のセリフじゃなくて、彼女が口にしていたのは『オカエリ、コーチャン』の方だけ。例えばコウジとかコウスケとか、とにかく『コーチャン』と呼ばれる男がいて、そいつが『タダイマ、マイコ』と言っていたってことさ!」


 被害者は一人暮らしで、しかも女性専用マンションだったのだから、その『コーチャン』なる人物は一緒に住んでいたわけではないのだろう。

 しかし被害者の部屋で『タダイマ』という言葉を、それもインコが覚えてしまうほど頻繁に言っていたのだから、それこそ半同棲と呼べるくらいに足繁くかよっていたに違いない。

 田山は、そのように推理しているようだった。

「この『コーチャン』って男が一番の容疑者、いや少なくとも重要参考人だな。お手柄だぜ、そんな男の存在をインコから引き出せたのは!」

   

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