第2話
小さい頃、僕は探偵小説に出てくる名探偵に憧れていた。
特に子供向けの探偵小説で描かれる探偵たちは、素晴らしい推理を披露して事件を解決するだけでなく、解決に至る過程において、優れた変装術を駆使して別人になりすまし、悪漢と直接対峙したりもする。
そうした小説を読んでわくわくした僕は、自分も変装上手な名探偵になろうと考えた。メイクで顔に陰影をつけたり、口に含み綿を入れて輪郭を変えたりという変装方法を、勝手に拝借した母親の化粧道具で練習したくらいだ。
しかし成長するにつれて、そんな名探偵たちはしょせん物語の登場人物にすぎないと理解。現実に難事件を解決するのは警察の刑事たちだと知り、僕は警察官を志したのだ。
それで本当に刑事になれたのであれば「夢がかなった!」と思えるのだろうが……。
同期の仲間たちにも先を越されて、いつまでも交番勤務なのが、現実の僕という人間だった。
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