魔王とマシンガンと女の子2

「なあ、あたしってさ、あんなに坂口君に嫌われてたっけ?そんなに喋ったことはねえけどさ、、、」

「何言ってんだ、おめ!大洗のファミレスでふっつーにあいつと、いちゃいちゃやってたべ!あれな。ああいうのな。おれ束縛とか、そんなん嫌いだけど、あれまたやったら、今度こそ本当に」

「坂口君、彼女できたん?」

「、、、な、は??お前、覚えてねえんけっ?どんだけビッチなんだべか、おめえ」

「?」

 けいは、とりあえず嘘をつくのが上手な人間ではないことは、誰より奈良が知っていた。奈良は、こいつ、知らばっくれる腕上げたな、と思った。

「ま、許してやるよ!一回だけならな!うわあ、まじおれ彼氏の鏡だっぺよ!おれの器、これ銀河系なみだわって話聞けよ、おめえ!」

 けいは、自販機の前で、ジュースを選び始めた。鼻歌である。直感で、思った。奈良は、もしかして、あのとき見たのは、けいのそっくりさん、なだけだったのかもしれない。

「、、、おれは、いつものファンタグレープな?」

 けいは、答えた。

「あいよ、ご主人様」

 夕暮れは、遠くから聞こえる犬の遠吠えと、相性が良かった。

 一方_。

 -

 眞弥は、あんぱんを食べながら、2人と一匹を自分の部屋へ案内していた。チュッパチャプスを分け与えた。一人、三本であった。買い過ぎであった。桂は、言った。

「、、、?ねえ、地球様なにこの<殺人禁止>って!」

 ぎょっとしている。人外の存在でも、ぎょっとすることは、あるようである。眞弥は、洗い物をする手を止めない。

「、、、」

「ええええもう一人殺っちゃったんかよ、わたしだったらそんな酷いこと、絶対しねえ」

 眞弥は、洗い物をする手を止めない。カエルは、しゃべった。柚宇の声である。

「桂。あんま言うな。眞弥ちゃん、なんかされたんだろそいつに」

「、、、殺すかね。それにしても。ひっどいな、ほんとに」

 木村優美は、にこにこしている。チュッパチャプスうめえ!が 脳内を永久ループ三段ジェットコースターだった。言った。

「眞弥、このアメおいしいね?」

 眞弥は、洗い物をする手を止めない。

-

「あれ??」

 自宅に戻ると、玄関先で、ちなつと自分の母親が、真剣に話をしている。けいは、直後に、ちなつに見事なブラジリアンラリアットを喰らわせられることに、なる。

「ぎゃふん!」

「どぉこ行ってたんだ!ばか。死ぬほど心配したっつうの!」

「ちなっちゃん、ごめんて。いろいろよ?あったんだって。あの話したじゃん?変なペットできたって。あいつら野生に帰してきたから」

「知んねえよ、もう」

 しかし、眞弥に話は聞いていて、ただごとじゃないことに巻き込まれていることは、知っていた。ただ、我慢できなかった。

「奈良っ。けいを軟禁しなさい。縛り上げて、どこへも行けなくさせなさい」

 真面目に取って赤くなる、さとし。けいは、即座に反応する。

「いや、そんなんされたら別れるし。てか、もう別れたんだったっけ?な?さとしくん」

「また、それ!?」

 さとしは、もういいよ、と言わんばかりだった。

 みさきは、普通に感動して、普通にいい料理を作ってやろうと、思っていた。あれだけ、天地裂けるほど、怒鳴り散らそうと思っていた自分が嘘のよう、である。

-

「魔王さとざくら。、、、。ほうほう、久しぶりに聞いたわ、その名前」

 兎瓦けいの外見が、完璧に崩れ始めた<それ>は、今は全くべつの女の子だった。花びらのような、長く太い髪を頭上からたらし、真っ黒いローブに身を包んでいる。かや。あの、ピアノ線娘と顔が酷似している。同じ顔をしていた。コピーした様に同じ顔であった。桂は、続けた。

「で?そいつが、この時代に何しに来たの?ゆしにフラれた?」

 眞弥は、口をへの字に曲げて、ゆっくり言葉をつなげた。まるで、しつけのなってない子供を相手にするような表情である。

「たぶん、ヒマ潰し、、、」

 木村優美は、ぐしゃっとチュッパチャプスをかみ砕いた。まだ、2秒しか舐めてないアメだった。にこやかだが、眉間のしわと、内に潜む怒りは隠し切れていないようだった。桂は、「ふうん」とだけ、言ってまた、<殺人禁止>を見た。

-

「ねえ、レノン」

「なんだよ、かや」

「ねえ、ツチノト」

「?」

 3人は、遊園地に来ていた。平日開園とともに、やってきていた。この遊園地の売りは、遊園地なのに、動物を観賞できることである。かつて、残念なガチャピンの恰好をした少年は、現在は、まったくふつうに決めている。歳相応の恰好だ。ただ、銀を強調しすぎなファッションに見えた。かやは、普通にワンピースである。生えていたはずの、二本のピアノ線は、ない。代わりに両耳たぶから、線とその先にマガ玉が、それを象ったものが付いている。なんということだろう。ツチノトは、タンクトップに、カエルベルトのままである。ツチノトとは、己と、書く。まさに、己を貫く、ゲイボーイであった。男が惚れる男の鏡である。もう、いい。気持ち悪くなって、きたからである。

「お前はさ!でも、ちゃんとしたの着て来た方がよかったと思うぞ」

 しかし、ツチノトは黙ったままだった。 果たして、彼ほどの漢がいようか。しつこいことを深くお詫びする。

「ねえ、レノン!」

「うるせえっておめえは!用件を言え、ばか」

「楽しもうね、今日は!」

 ツチノトは口を開いた。

「、、、いい男はいないかしら」

 残念な内容だった。

 この三人は、この惑星の所謂、生態系を統括する、存在、非生物である。この場合の生物の定義とは、繁殖する能力を持ち、ある程度時間が経つと、老い、やがては死に、腐る。その構成物質を再び大地に返す存在を、指す。この三人、もとい惑星守護色期巫天には、当てはまらなかった。ひたすらに、生物の使用、捕食、利用する、すべての惑星資源を、その循環を 円滑にし、それぞれの化合物が、元あるべきところに返し、生まれいずる命にそれを分け与える。そんな存在である。この度は、事情があって、合計9人のそれは、意識を「従え」今は、ある者は、人間の恰好、ある者は動物の恰好そしてある者は、マシンガンの恰好をしていた。ミニシャチのことである。だが、一人まだ登場していない惑星巫天がいた。名を、神岡浄介と、言う。坂口浄介と同じ名を持つ、太陽を丸ごと司る最強の具象である。

「ねえ、レノン!」

「っせえっよ!アホ毛ぇ!」「大好きっ」

-

 坂口は、だんだん自分は、頭良くなってきたのでは、ないかと自惚れた。そうでもしないと、もういろいろ「嫌」だからだ。わけがわからない。死ぬほど、煙たいと思った奈良の彼女のことが、頭の隅でやたら、気になるしあの女に聞かされた、フレーズが次々と悪夢のように押し寄せてくるのであった。今回の中間テストの結果は本当にひどかった。坂口は、携帯をにぎり、また奈良にうっぷんを晴らしたくなったが、やめた。奴は、今、彼女と楽しくやっていることだろう。あの女、おれを弄びやがった。

<好きに、なっちゃった。かみさま>

<この世の、すべては、音>

<あなたの名前は、私達全員のリーダーと同じ名前なの>

<デートしようぜ>

<地球様とは

 は、とした。もう一回思いだそうとした。頭の中の、巻き戻しを連続で押した。

<地球様とは神岡眞弥様のことよ>

 疲れも頂点の坂口は、もう一度外に出ようと、決めた。今は昼である。もう、学校などどうでもよかった。背中を打つ、母親の切なげな声も全く耳に入らない。近くの公園に向かった。その公園には、草むらがあった。カマキリがいた。坂口は、言った。

「お、おれにケンカ売る気か!?カマキリのくせに、」

 その少年の後ろに、一つの影があった。兎瓦けいであった。

「あっれ、坂口君なにしてんの、こんなとこで!」

「けいちゃん!」

 何かもう、何も悟られたくない。自分の一切の記憶が信じられなかった。

「、、、。そんな怖い顔しねえでくれよ。なんか、わたしらデートしたんだって?」

 けいは、意地悪な顔で、坂口を見た。坂口は、頭に血が昇った。

「やっぱあれおめえだったんけ!! は!もう、いいよ死ね!」

「し、、、!」

 冗談で言ったつもりだったのに、けいは本気でびっくりしてしまった。

「、、、!」

 言ったことを後悔したようだったが、もうよくわからなくなり、坂口浄介は、その場を逃げるように離れた。

 けいは、ひどく、傷ついた。

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