アジサイとマシンガンと女の子(名前はけい)
「ケイ!」
違った発音で、同じ名を口にしたマシンガンは、そのまま深い眠りについた。さっきの、けいのようである。目の覚めた、マシンガンは仲間の元にいた。兎瓦けいの家である。みさきもいた。
「おれ、、は、寝ていたのか」
マシンガンの視界に入ったのは、みさき、彼女が先ずはじめだった。
マシンガンには疲労感があった。マシンガンは、身体を起こした。マシンガンは、次に、ふざけた恰好をした小山、自治医大、鹿沼を確認した。三頭は、特に心配していた様子でもなかったのが、うっすらと腹が立った。マシンガンは、何かに拒絶した。影が在った。自分に覆いかぶさる影である。認めた瞬間、ぞっとした。マシンガンは、ぞっとしているのは、自分だけだということを知っていた。
マシンガンは、真後ろにいる人類に恐怖した。兎瓦けい、どこからどう見ても、そう名付けられた個体
だが、そして周りもそれを疑う様子は見られなかったが、違っていた。マシンガンは、その人間に
恐怖した。その人間は、マシンガンに声をかけた。
「だいじょうぶ?マシンガン!」
マシンガンは、恐怖したままだった。
第5話~アジサイとマシンガンと女の子
「そんなこと急に言われても、わからん!!」
締め切った部屋。言うまでもなく、ここは、おなじみ兎瓦家なのだが、あの兎瓦けいの二階の部屋の中なのであるがそれでも現状は、非常に特殊だった。本来の持ち主である、けいとはべつの人間が、完全にそれはもう、完全にくつろいでしまっているのだ。 ばりばり、とお菓子をほうばる目の前には、疑り深い目で、小型のシャチマシンガンが、目をばっちり、合わせるように警戒するように、窓際に、ギターと共に、「居た」。ばりぼり。
兎瓦けいだった人物は、目を一点に集中させ、マシンガンを見つめているのだ。異様過ぎる、一人と一頭の、空気だった。敵対寸前だが、決してそれでなく、それであるべきではない、とマシンガンは、彼だけがうかがい知る、不利を嘆いた。わからない、そう言われた、その女の子は、反応を開始した。
「ワタシトセックスシテ」
目は見開いていた。マシンガンは、置物のようだった。
「性行為を、なぜ人類とせねばならん阿呆が」
「冗談なんか、こういう台詞が言いたい気分だったの。ふ、、、ふはは」
あー、と裏声で、不快な音を直後に発した女の子は、空になった菓子袋を、壁隅に投げ捨てた。こらと、マシンガンは、思っただけだった。
「いつだって、人間は勝手でしょう?マシンガン」
「気安く名を呼ぶな」
「でも、シャチだって勝手なはずだよね、生きてるんだから。その違いは何?」
「興味がないな。求めるものが、本来、根っこから違う。シャチは、物質を求めない」
「あははははははははは、やっぱつまんねえな、この話!マシンガン~」
女の子は、甘えるような声を出した。目が光った。
「じゃあこの凄さは?マシンガン」
「だまれい!!月ィ!」
マシンガンは、手加減容赦なしの、フルヴォリュームで、音の差し支えない表現だと判断する、攻撃を開始した。
音圧で、「月」と呼ばれた、女の子の髪が、動いた。月は、瞬きすら、しなかった、そのまま、手を伸ばし、あくびをした。長い。
「夢、八つ裂き」意味不明のフレーズを、はっきりと発音した月は、ごろりと、けいのベッドに横になった。マシンガンは唱えた。「JETTOES」。瞬間、めこりと、ベッドがへこんだ気がした。だが、特に何も起こらなかった。マシンガンは、舌打ちをした。何が、起こっているかは、判断しづらい。けい、だった、女の子月は、目を閉じた。いびきをかきはじめた。マシンガンは、ぷるぷる、と怒りに震えた。
何時間かして、月は、目を覚ました。マシンガンは、そのままの恰好だった。
「ははははっははははっはは、ヒマなんだね、マシンガンさん!やることないの?」
ふう、と一呼吸おいて、月はベッドから立ち上がった。瞬間、何かつぶやいた。
「真理ってなんだろうねマシンガン お腹空いたからあたし 何か食べたいなあ」
早口なのと、音量が不足していたことで、マシンガンの耳には届かなかった。マシンガンは、聴きとろうとはしなかった。
月はシャチを睨んだ。
「何か食べたいなあ!買ってこいよ、シャチぃ!」
いきなり、悲しげな声で、マシンガンに歩み寄る月。髪の毛が、シャチの噴気孔にかかるほどの、距離。かがみこむ形で、月はすぐに離れた。行動のいちいちが、動機、理由不鮮明だった。月は、小声で、なんちゃって、と言った。これも、マシンガンには聞こえなかった。マシンガンは、反応した。
「おい、月」
月は、さえぎった。
「時間の仕組みを教えてあげる」
時が、止まった。気のせいだった。だが、本当にそんな気がした。不可思議な感覚だと、電化製品でしかない、マシンガンは、思った。
「男=葡萄と女=桃互いに、わからないものだが、さじ加減だよな、そんなもの、性別違うからって気にはしないよってとこすら、絶妙にずれてやがる。例えばバスケットボールだとしてさあ男は、自分が男だから点取りにいかなきゃ って思ったとする でも同じとき、女は、男なら、勝利のために、仲間にパスして繋げろよ って思う。なあ なんなんだろうな 性別ッテ タノシクナイカ、シンユウ」
バスケットボールを知らない、マシンガンには、何の事だかわからない。わからないでよかった。特に、わかりたくはなかった。
部屋には、ひとかたまりの、アジサイが、在った。美しかった。、、、ひょっとしたら、この世の何よりも美しかったのかもしれない。でも、それはおれの主観だ。マシンガンのそばにあるギターは、助けたい、と願うひとの心を実現するものだと言った。だが、けいは、どうやら救われた現状には、置かれていない。何かが、おかしかった。月は、ふうと一呼吸おいた。マシンガンを、狙いを定めた男性をその気にさせるため、のような表情で見つめた。気味が悪かった。
「さっき、あたし、この子の、能幹(のうかん)抜き取ったときね?生まれ変わった気がして、うれしかったんだよぅ?何もかも暗くなったし世界の全てに救われた気もした」
目が変わった。
「って言ってんだよ、マシンガン」
何を促しているのかも、わからない。どこを実際見つめているのかも正直わからない。ぶるる。そのとき、ギターは振動を開始した。ばきん。「ああ!!!」マシンガンは叫んだ。木材を叩き割るように、月がギターを粉砕してしまったのだ。マシンガンには、確認できなかった。いつのまに、彼女が距離を詰めていたのか。「ちょっと~、けい~!?ごはんよ~?」
「は~い!」
兎瓦けいの、温度だった。さっきとは、別人だった。
「ちょっと待ってな?シャっちゃん?」
ぐふ、と笑いを押し殺し、ててて、と軽快に、階段を降りて行った。マシンガンは、壊れたギターを見ていた。
-
「なんでさあ、マシンガン?」 上がってきた月は、恐ろしく上機嫌だった。いや、恐ろしくを取っ払っても、いいくらい、嫌みのない、またさっきから豹変した、態度でマシンガンの前に現れた。
「お前、変わったな。」
なんと、マシンガン、つられたか、警戒を解いてしまった。感じ取っていた。今の、月は、マシンガンに危害を加えるつもりなど微塵もないことを。説明しようのない、動物の感覚だった。だが、厳しさを内に戻し、マシンガンは、対峙を決意した。特に、何をするわけでもなかったが。
「兎瓦けいちゃんが選ばれたの?」
「そう、決まっていたからだ。名前もお前と全く同じになったろう?」とは、いっても、やはりさっきまでの、月とあまりにも違うので、どこかフレンドリーなマシンガンがそこには、いた。
「兎瓦ってさあ、素敵だと思う。響きが好き。あ、ほんとにその、音の話ね?音の」
「お前、本当に変わったな。下で、何かあったか?」
「べつに。お腹一杯になったからだな、そうだな」
マシンガンの疑問は解消されなかった。別人としか思えない上機嫌ぶりだったから、だ。
月は話した。長い話だった。「にしてもさあ。いい話だよねえ。だってさあ。あんた、何の担当だっけ?」
急に話を変え、質問を唱えたが、マシンガンは反応しなかった。話を続けた。
「あ、JETTOESか。、、、。一番、あたしの嫌いな。 まあ、いいや。ふふふ。うそうそ。好きも嫌いもないっちゃね~。 けいちゃんはきっと今、幸せだね。旅をしているんだねえ。過去に。ふふふ。あのとき、シャチを助けたときの恩返しが、こんな形で現れるなんてねえ?でも、どう??そんな、人間も生まれる前の過去なんかに行きたいと思う??恩返しとして、機能してるのかねえ?あっはっはっははっは」
「まあ、、、」
マシンガンは、厳しい目をした。
「運命だからな」
-
「虫ぃ、出て行かんか!」
マシンガンは叫んだ。ほどほどのヴォリュームにしといた。もう辺りは暗い。部屋の中から、認められる外は、完全な暗闇だった。笑っているような、暗闇だった。
アジサイから、虫が6匹出てきた。
「ところで、あの他のシャチどもは?」
月は、冷酷極まりない表情で、言葉を吐いた。どこか、さっきまでの月に戻りつつある気がした。こいつ、本当に、腹の満たされ具合で、機嫌が上下するのかも、と思った。マシンガンは、冷やっとした。マシンガンは、珍しく質問に対して答えを用意した。
「小山、自治医大、鹿沼は、帰った」
「そう」
月は、特に興味もなさそうだった。続けた。
「マシンガン!サバ、カマキリ、キリン、イヌ、シャチ、アジサイの共通点て何だと思う」
「そんなこと、急に言われても、わからん」
マシンガンは、デジャブを感じた。気のせい、かもしれない。よちよちと花から出てきた、6匹の虫は、完全に無視されていた。構うでもなく、虫たちは、月に近付いていく。月は、気にしない。
「ねえ、求喰川の話もっと、もっと、しようよ。マシンガン」あさりがわ、とは何のことかは、不鮮明だった。だが、マシンガンには、心当たりがあった。聞いたことのある地名だった。確か、、、。思い出せなかった。
「チョウとゆし。二頭のシャチの話。ねーえ」
近付いていた虫たちは、月の足元まで来た。
そして、忽然と消えてしまった。「?」マシンガンは、驚いた。壊れたギターも、いっしょに消えた。
時が満ちた。
マシンガンは、体で精神を感じた。
揺れる心は、何も写していなかった。
昨日は今日だった。
想っている内容も薄れた。
マシンガンは、視界を洗われた。
別の場所に、居た。
見たこともない、海辺。本来シャチがいるべき場所に、ついさっきよりかは近かった。
そのとき月の声がした。
月は、月から聞こえた気がした。
瞬間、ああ、ここで、兎瓦けいに会える、と気付いた。
「シャチの話しようぜ、マシンガン。組もうよ、マシンガン」
声はもうひとかたまり、雨のようにマシンガンだった物体にキスをした。
マシンガンだったものは、今、一輪の花になっていた。いつのまにかは、わからなかった。
砂浜には、「ようこそ、求喰川へ」そう書いてあった。遠くで、シャチの吹く噴気が響いていた。
月の声が続いた。
「鬼が住む川あしゅらしゅらイシアシアガン」
けらけら、と浜辺中に木霊した。一人のもの、とは思えなかった。
笑い声だった。
笑い声はYAんだ。
etiatiagxn
「求喰川へようこそ、人類」
声は、そう聞き取れた。
浜辺の花は、風に揺られた。
花は、兎瓦けいを待ったかもしれない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます