サバとマシンガンと女の子2
見たくはなかった。なかったが、どうやら、それは意思を持ってるかのように、けい、本人を見つめてその視線を離そうとはしない。
「んぎゃあああ!な、な、なん」
バリバリ!
「はきゅん!!いてえ」
「ほんっっとうに、黙ってくれないか!?寿命が縮みそうなほど、不快なのだ、お前の悲鳴が!小娘」
マシンガンはいつものように激怒した。まあ、わがままであり、理不尽である。誰のせいだと思っているのだろう。「うるせえ!シャチ!てめえ、いつになったら、あたしに返すんだ!?あ!?」「けい!病院で、うるさくしないの!」「だってお母さん」「これはな。」マシンガンは、説明を(いつになく頼りない調子だが)開始した。
「おそらく、あの巨大なシャチ、さっき出現したな?」「いや、お前が小さいんだべ?」「だまれ、小娘。いつになく、喰ってかかるな。ババアか」「ああ!?消えろ!!ばか!」
「まあ、いい。聴け」「うるっせえ!もう、我慢ならねえ!お母さん、今すぐこの変な安物、捨ててきてよ!マジでもう」パン。
驚くしかなかった。みさきが、けいを、彼女の頬を叩いたのである。なんで、今、叩かれるのが、あたしなんだ?とけいは、もはや笑いが込み上げてきた。こいつら、全員死ね、と思った。もうどうでもいい。走り出した。体調は、戻っていた。部屋を出た。みさきの表情は、確認していない。でも、もうグレてやる、と思った。「待ちなさい!けい」
「言っていいことと、悪いことがあるのよ」
みさきは、笑っていた。けいは、廊下で、振り返りながら、混乱を隠せず、未知の生物を視るように、自分の母親を見た。
「いきものに、捨てる、なんて絶対言っちゃいけないのよ?め!」
もう、馬鹿らしくなって、けいは、しかし何か、悪い気もしてきて、病室に戻っていた。とんだ茶番だ、と自分自身を冷やかした。
「けい」
マシンガンは、声をかけた。
「ごめんね?」
はっと、マシンガンに振り向いた。この偉そう度なら、万里の長城なみの、スケールを誇るマシンガンが、謝罪したのである。よりによって、ごめんね、であった。
「あはははっははっははっははは」
バリ。笑った、けいを電撃で射抜いた、マシンガンは説明を再開した。曰く!
「ごほん。おそらくさっきのシャチはな」 窓を見た。一羽の雀が、とまった。窓溝の、虫を捕食してるようだった。あ、けいは、マシンガンの話の導入部分を聞き逃した。まあ、いいやと思うでもなく思った。
「、、、製品なのだ。要するにな。おい、けい、聞いてるか?」
「おう!」
うそをついた。
「、、、加えて、あのお前の顔は、、、」
けいは、そのとき見逃さなかった。
「、、、笑ったな!!」
けいは、叫び声をあげた。マシンガンは、ぷるっと震えた。口元が緩んでいた。笑っていた。ギターに付いた顔にウケていた。不謹慎の鏡、その骨頂だった。
「マシンガン、、、!」
マシンガンは、真顔に戻した。
「何のことだ?べつに、こうして口角をあげることが、物事を可笑しく捕えそれを、表現している、となぜ、わかる?シャチが人間と同じと思うな。説明を続ける」
だが、間違いなく、マシンガンはウケていた。若干、みさきでさえ、癇に障っている様子だった。変な空気になったが、戻した。
「ごほん。あーあー。お前の顔はな。いや、かわいいと思う」
「だまれや、シャチ。なんかそういう取ってつけたようなのが、一番腹に立つと言いたいとこだけど、まあ、それは受け取っておく。うん、そいで?」
「お前の顔。あれはな。お前がこれから、治療されることを意味している。しかし、何が悪いかは解らない。どっか、痛まないか?」
「べつに。痛まねえし、心当たりも特にねえべなあ!なんか失礼なんですけど!顔がどうだら、とか!女の子に」
「そうか。それならいい。把握しきれていない部分があるのでな、私も」
「あ」
マシンガンとけいの声が揃った。同じ方を、向いていた両者は、同じ驚きに目を丸くしたのである。顔が、消えた。
「、、、説明を続ける。でだ。前回と今回で違うのは、この一点だ。 救われたのが、逆、この一点だ」
「おそらくあのシャチが、お前を救いたい、と願ったのだ」
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