とりとめもないお話ときどき猫

ねこ沢ふたよ@書籍発売中

第1話 本日もアラームが鳴る

 時計のアラームは、なんであんなに喧しいのか。

 もちろん、スマートフォンの設定をしたのは自分だから、これは完全なる自己責任。


 だが、いくつかある候補からなるべく耳ざわりの良い曲を選んだはずなのに、二、三回聞けば、もう嫌いになる。


「くっそ!」


 私は、モゴモゴと布団に絡まりながら手を伸ばして何とかアラームを止める。


 うう……。まだ眠りたい。


 布団の中で葛藤して、私は、起きなければならない理由を探す。

 猫のゴハンをあげる、これは……お母さんがやってくれないかなぁ。

 えっと今日の授業はなんだっけ? 国語に数学、英語……物理……、体育。うわ、体育ある! 嫌だなぁ。寒いのになぜ学生は体育をしなければならないのか。学生に健康的に生きて欲しいならば、まず冷暖房完備のスポーツジムを準備して欲しい。

 いや、ニュースで散々お金がないってことばかり言う政府が、子どもにお金使ってくれるわけないけれど。

 少子化って言うならば、もっと大切にして欲しい。こんなのだから、子どもは減るのだぞ! 知らんけど……グゥ。


 眠い頭でツラツラと無駄で脈絡のないことをダラダラと考えているうちに、暴力的にヌクヌクなお布団の魔力が私を襲う。


 二度寝。


 お布団なんてチートに私が勝てるわけもなく、完敗した私は意識を失う。

 私の精神は、再び、ふわふわと浮き立って夢の世界へと旅立とうとする。


芙美子ふみこ! 早く起きなさい!」


 お母さんの怒りの声が本日も私の部屋に響き渡る。

 お母さんが怒っている。

 つまりこれは、起きざるをえない状況だ。


「お母さん……今、何時?」


 なんとか布団から我が身を引っ剥がして、私は起き上がる。


「知らないわよ! お母さん、もう行くからね!」


 お母さんがパートに出勤する時間ってことだ。

 と言うことは……八時?

 ……げ。嘘!


 慌ててスマートフォンを確認したが、時計は、恐ろしいことに、予想通りの時間を指し示している。

 

 後、十分後には家を出なければ、電車には間に合わない。

 

 あの電車に間に合わなければ、遅刻確定なのだ。

 どうしよう。

 いっそ今から頭痛がしたりお腹痛くなったりしない?


「あの……病欠と言うわけには……」


 おずおずと提案する私を、お母さんが無言でギロリと睨む。


 あ……駄目ですか。

 そうですよね。

 ほぼ毎日二度寝して寝過ごしておりますもの。それ認めていたら、出席日数ヤバ子になりますよね。

 はい、全力で準備いたします。


 本日もギリギリ。

 もう体育の時間、要らないよね? という全力疾走で駅まで向かって、なんとか電車には間に合いました。

 


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