序章
風を切る
第1話
リュウの視界には、見渡す限りバイクがあった。
赤、青、黄、黒と、どれもみな傷ひとつないもので、ネオンをあびて光を反射している。エンジンは切ってあった。持ち主を静かに待つ数台のバイクからは、熱気がはなたれているように見えた。
「今日はもう帰ろうか。あんなとこでも授業にでなきゃ、さすがにあぶないからね」
缶コーヒーを手にしたユウは、ダークブラウンのさわり心地のいい髪をかきあげると、リュウの隣にそっと腰掛けた。缶コーヒーをもつその手には、形のいいかくばった指がそなわっている。
リュウはユウに目をむけると口をひらいた。
「あいつらはどこいったんだ」
「ケイゴはコンビニ。他はしらないな」
リュウは、高校からのふたりの友人と、その頃の後輩とで走りにきていた。ユウは友人のひとりだった。
「ああ、あそこにいた。バイクほったらかして、あいつらなにしてんだろうね」
どこか遠くのほうをゆっくりと動いていた視線を一点でとめたユウは、呆れたようにいった。視線をおうと、束になって女子のグループをナンパしてるのだろう、後輩たちがいる。
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