第36話 写真

 私には月に一度、一緒にランチを食べに行く友人がいる。


 日頃のストレスや愚痴などを言い合いながら、美味しいものを食べて心身ともにリフレッシュする。

 大人になると、こういう息抜きは本当に大事だ。



 彼女はいつも、注文したものを食べる前に写真に撮る。


 インスタにあげるのが趣味のようで、彼女のポストはいつも美味しそうな食べ物の画像ばかり。


 私はそういう習慣がないので、注文したものが届いたら、すぐに手を付けてしまう。


 写真を撮る彼女を見て


「あ!自分も撮ればよかった……」


 と思うのですが――すでに箸を入れ、盛り付けを崩してしまった後では遅い。

 食い散らかしを撮っても仕方ないので、


「今度は忘れずに撮ろう!」


 と心に誓うのだが――



 ついつい、撮り忘れて食べてしまう(笑)



 たまに思い出して写真を撮るのだが……







 ――なんだろう?




 私――もしかして、食べ物撮るの下手ですか?




 彼女と同じ物注文して、同じように撮ってるのに、私が撮るとちっとも美味しそうに見えない。


 映えてない(笑)


 彼女が撮ったのは、凄く美味しそうに見えるのに、私が撮ったヤツ、なんかくすんでる。


 おかしい……

 そんなはずない。

 同じものを頼んでるのに。


 光の加減だろうか?


 と、あらゆる角度から撮影してみても、なんだかしっくりこない。


 一体なぜだ!?





 と、考えて。

 思い当たった。






 熱量だ。




 彼女の、食べ物にかける情熱は私よりも遥かに強い。


 故に、美味しいお店を見つけるのも上手い。

 彼女に勧められた店は、どこも当りで美味しい店ばかりだ。


 新規開拓に余念がなく、気になった店には一人でも気にせず赴いて食事をする。



 一方私は、一人で店に入り食事が出来ない。


 まぁ……ファストフード系ならなんとか行けるけど、きちんとしたレストランとかは絶対に無理。

 ラーメン屋も牛丼屋も一人じゃ入れない。


 今時は、一人でも気軽に食事が出来るよう配慮されているらしいですが――


 人がいる店で、一人で食事をするくらいなら、家でカップ麺でも啜っている方が気楽なんですわ(笑)



 こういう熱量の差が、きっと写真に出るんだろうな。


 好きなものを撮る時は、見えないオーラがちゃんと映り込むんだろう。




 そう思って自分が撮った写真を見返してみると、まぁ実にくだらないものばかり。

 どうでもいいものにかける熱量は、私の方が彼女より上だと思う。



 自慢にはならないけどな。






 これからは、もう少し意識して写真を撮ろうと思った。






 2024・12・26

 天気 晴れ


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