第10話 パラメータ

 私は、ある時ふと考えた。


 この先、自分が生きていく上でなにが一番必要か?――を。



 自分の人生はもう後半戦に入っている。

 ここから先は、少しでも身軽に気軽に生きていくために、余計な物は捨て、必要な物だけを残して生きていく方が楽ではないか……と、そう考えたのだ。


 アホなりに(笑)



 人にはそれぞれ割り振られた能力のパラメータがある。


 昨今のWeb小説でよく見る、登場人物たちに割り振られるアレだ。

 ゲームや小説では数値化されて分かりやすく教えてくれるが、現実にはそういう数値は見えない。


 健康診断の検査結果のように、目で見えたらいいのにね――


 生まれながらにチートスキルを持っている人もいるだろう。


 それを見事に使いこなして、開花できれば最高の人生だ。



 けれど、悲しいかな。

 大抵の人は、そんな特殊なスキルには気づくことなく一生を終えてしまう。



 なぜだろう?


 それはきっと、余計なパラメータに惑わされて、上げる必要のない数値を必死こいて上げているからではないか?


 だから、これまでの人生で必要のなかった、あるいは、もう必要のないパラメータは捨てて、今後必要になりそうなものの数値だけを上げていけば良いのではないか?



 そうすれば、隠れパラメータを発見できるかもしれない!!



 ――と思いついたのだ。


 アホなりに。




 そこで私は考えた。

 今の自分に必要のないパラメータは何だ?――と。





 女子力だ。





 こう見えて(見えないか……)

 私も、女だ。


 自信はないが、多分女だろう。


 幸いなことに既婚者なので、恋愛ごとには無縁だ。

 異性の気を引く必要もないし、あってはいけない(笑)





 ……もう、要らんだろう。

 女子力。


 そもそも。

 我が家は男所帯。

 年々、自分の女子力が衰えていることには気づいている。


 私は思い切って、女子力のパラメータを消すことにした。




 ……すると、どうした事か。

 それまで0に近かった、あるパラメータの数値が、爆上がりしたのだ!












 オッサン力、だ。




 やることなすこと、考えること、旦那よりもオッサン化してきたのだ!


 そう――

 女性ホルモンを下げた途端、男性ホルモンが優位に立ち始めたのだ(笑)


 若い頃から、自分の中に女じゃない何かがいる……とは思っていたけれど――

 女子力を捨てた途端、そいつが自己主張をし始めた。




 隠れパラメータ、【オッサン力】が発動してしまった。





 


 いや……違う違う、そうじゃない。

 それじゃないんだ!



 今更、そんなものを開花させてどうする(笑)


 いらん!

 こんなもの!


 

 


 マズイぞ。

 このままでは、いつか髭が生える。




 あ。




 そうか――!




 巷で、たまに見かける、髭が生えてるお婆さん。





 あの人たちも、ひょっとしたら【オッサン力】の能力者かも――……





 2024・11・30

 天気 晴れ








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