第6話 ゲーム

 クーロンズゲート。


 というゲームをご存知だろうか?

 私はこのゲームが死ぬほど好きだ。


 かつて香港にあった、九龍城という違法建築の集大成の様な建物――というか、街を舞台にしたゲームでして……


 四神獣の見立てを行う風水師となって、胡同フートンと呼ばれる、いわゆるダンジョンに入り込んでクエストを攻略していくんですが。


 ストーリーは一本調子なので、クエストをクリアしないと先には進めないし、移動範囲も限られているので自由度――という点では限りなくゼロに近いんですが……


 なんというかもう、この世界観がたまらなく好きだ!



 20代の頃。

 私は友人と2人で返還前の香港へ旅行に行った事がある。

 九龍城はすでに取り壊されており、キレイな公園になってしまっていたが、雑多な街並みはジャッキーチェンの映画さながらで、ものすごく興奮したのを覚えている。


 今は空港が別の場所に移ってしまったが、当時香港にあった啓徳カイタック空港は、建て物上空を旅客機がギリギリで飛び交う事で有名で、見てて本当に圧巻だった。



 戸建ての家は郊外に多い。

 街の中心部は集合住宅がほとんど。

 それもかなり年季が入っていた。


 鉄格子の様な枠がはめられたベランダには、洗濯物がたくさんぶら下がっていた。


 清潔な街並みとは言えないけれど、入り組んだ狭い路地を覗くと何故だか心が騒いだ。


 夜ともなれば、派手なネオンサインが躍り、その看板スレスレに二階建てバスが通りを走る。

 店先でオッサンたちがテーブルを囲んで麻雀やってたり、工事現場の足場は竹で組まれてて、なんだかもう「凄い」以外の言葉が出なかった。


 街全体がエネルギッシュ。


 この街で生まれ育ったわけでもないのに――


 どこかノスタルジーを感じた。





 クーロンズゲートをプレイしているとを、この時の事を思い出してワクワクする。


 また、あの街に帰りたい……そんな気分にさせてくれる、摩訶不思議なゲームなのだ。





 現在の香港もだいぶ様変わりしただろう。

 古き良き昭和の日本が消えつつあるのと同様に、

 古き良き香港もまた、ノスタルジーの彼方に消えつつあるのかもしれない。



 ここ数年。

 テレビゲームをしなくなった。


 単純に、ゲームをする時間がないだけなのだが。





 久々に引っ張り出して、やりたくなった。





 2024・11・26

 天気 曇りのち雨

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