第4話 老い

 子供叱るな来た道だもの

 年寄り笑うな行く道だもの



 という言葉がある。



 子供がしでかした事は、かつては自分もやらかした事。

 だから叱ってやるな。

 年寄りの愚行を笑ってはいけない。いずれ自分も似たような事をするんだから……


 そんな戒めの言葉でしょうか。

 いい言葉です。


 現代の日本人が失いつつある心の様な気がします。


 子供は悪戯をするもの。元気に動き回り飛び回るもの。

 なのに最近は声がうるさい、とか。

 公園でボール遊びすんな、とか。

 自分達大人は散々子供の頃ふざけて遊び回ってたことを忘れてしまったのだろうか?

 今よりもっとヒドイ事をしていたように思う。


 人んちの塀よじ登ったり、庭先の木の果物を勝手に取って食ったり。


 公園でボール遊びどころか、公道にチョークでライン引いて、ドッヂボールとかやってた気がする……

 近所の家にボール入っても「すいませーん」とか言いながら取りに行ってたし。


『子供叱るな来た道だもの』だ。





 そして――老い、だ。


 自分も、いずれはその領域に入る。

 今が若くても、誰だって通る道だ。


 年々老いていく両親を見て、つくづく思う。


 テレビの音、大きくない?

 その話、前も聞いたな……

 お札、ペロッて舐めるのやめてぇ!


 年寄り三大あるあるを並べてみたけど、これは全てそうなる理由があるのだ。


 テレビの音量→耳が遠い

 同じ話→誰に話したか覚えてない

 ペロリスト行為→皮膚の潤いが無い、カッサカサ


 いずれ自分もそうなる。

 いや、もうなってる部分があるかも。

 認めたくはないが……




 そう!



 そうなのだ!

 認めたくないのだ!

 自分が老いたという事を(笑)


 物を見る時焦点が合わず、老眼鏡で一生懸命見てるのに、それでも見えないから眼鏡外して裸眼で見たら、

「裸眼の方が見えるじゃねぇか!」と、1人で突っ込んでみたり。


 相手の声がよく聞き取れないのを、声が小さいからだと人のせいにしてたけど、自分が見ているテレビの音量が意外に大きい事を指摘されて落ち込んだり。


 ビニール袋を開きたいのに指先ツルツル滑って開けなくて、息子に「ちょっと頼む」と頼んだら、息子は一発で開いたのを見て「チッ」と舌打ちしたり。





 ……これ読んで、そこで笑ってる貴方。



『年寄り笑うな行く道だもの』 だぜ。




 でも。

 この言葉には続きがある。





 来た道行く道二人旅

 これから通る今日の道

 通り直しのできぬ道





 今日という道は、今日しか歩けない。

 だから今日来たこの道を、しっかり覚えておこう。

 戻って通り直すことは、できない道だから――



 2024・22・24

 天気 晴れ

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