35.濡れ衣
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
橘[島]代子・・・仕事上、通称の島代子(しまたいこ)で通している。「有限会社芸者ネットワーク代表」改め「Geikoネットワーク」。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩。芸妓の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。
飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。カムフラージュの為、タウン誌『知ってはる?』を発行している。
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
烏丸まりこ・・・Geikoネットワークの事務員。
貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。
西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。
神代チエ・・・東山署刑事。『暴れん坊小町』で知られる。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
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※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。
現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。
※この物語に登場する『芸者ネットワーク(本作からGeikoネットワーク)』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。
会社名は『スポンサー』の一人、橘吉右衛門が命名した。
リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子(しまたいこ)である。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。
午前9時。Geikoネットワーク。
烏丸から電話を受け取った塔子が相手をした。
「ああ。おかみさん。え、ほんまに?社長は午後からですから、出社次第、伝えます。」
午前中は、代子は病院だ。
お昼前。代子は、車椅子移動車で出社した。
「メール、受け取ったけど、『湯豆腐どうどす』さんから、お稲荷さんが習われている、って?」
「イギリス人が、また伏見稲荷の鳥居で悪さしようとしている相談を立ち聞きしてしまったらしいの。今夜午後7時に。」と、塔子が説明した。
「分かった。」
代子は、すぐに東山署とのホットラインで報せた。
「分かりました、いつもありがとうございます。」
電話の相手は、船越副署長だった。
午後7時。伏見稲荷。
閉まっている売店の隣を、ジープが駆け上る。
チエが声をかけると、也荊を撮影に来たカップルだった。
階段をジープで駆け上るのも、許可なく撮影するのも違反だが、鳥居に悪戯しに来た被疑者ではない。
どこからか那珂国人が出てきた。そして、何やら呟いて走って逃げた。
もしや?と思い、チエは、後を茂原に任せ、中町に録音した音声を翻訳機にかけるように指示した。
イギリス人のカップルは、ここの也荊が綺麗だと那珂国人に教えて貰った、と供述した。
チエは走った。
そして、救援に来た弓矢らと共に、稲荷山の鳥居に白ペンキをかけている那珂国人
を現行犯逮捕した。
午後9時。代子のマンション。
代子は、結果が気になり、まだ入浴も睡眠もしていなかった。
車椅子人間にとって、両方とも重労働だから。
「今、まだ府警の方では取り調べが続いています。那珂国人の悪戯軍団は、イギリス人カップルに伏見稲荷の夜景のことを教え、レンタカーの事務所の電話番号も教えました。そして、稲荷山に向かった。イギリス人のカップルの女性のハンカチも持って。『陽動』に他人、他の外国人を利用したんです。ウチは、イギリス人カップルの方を引き受けて、那珂国人集団は府警に任せました。ウチが見付けた那珂国人は、うっかり間違えて来たんです。お陰で道案内して貰えました。弓矢さん達にヘリで先周りして貰って。ヘリ言うてもオスプレイです。府知事が手配してくれました。被害に遭った鳥居は2本で済みました。康夫ちゃんは、断固訴える、と言っています。外国人も色々。純粋に京都見物する者もいれば、目立ちたいが為に、わざと法を犯す愚か者もいる。今回も情報が無かったら、状況証拠で誤認逮捕するところでした。代子さん、ありがとうございました。」
涙声で報告するチエに、もらい泣きして、代子は、風呂の準備をした。
明日、稲子達に、自慢しよう。ウチらは、正しいことしてるんや、と。
―完―
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