10 次なる発見

早朝、柔らかな朝日が採掘場を包み込む中、零は新たな挑戦に取り組んでいた。


ハルの示す方向を頼りに掘り進めた岩場は、これまでにない堅さと規模を誇る大鉱脈の可能性を秘めていた。

零は汗を流しながらも慎重に作業を進め、槌を振るう音が谷間に響き渡る。


「ここ、すごく大きな鉱脈っぽいよ。」

ハルが念話でそう伝え、尾をふりふりしながら零を見つめる。

零もその直感を信じ、さらに掘り進めた。

しばらくして、ついに大きな岩片の奥から複数の輝く石が顔を覗かせた。


「これは…ルビーか?」

零はその石を手に取り、鑑定スキルを発動させた。

鮮やかな赤い光を放つ石は高純度のルビーであり、それも大ぶりな結晶だった。

零は目を見張り、すぐに周囲の岩を確認する。

「どうやらここは宝石の塊が眠ってるらしいな。こんな場所を見つけるなんて、本当にすごいぞ、ハル。」

「でしょ?もっと褒めていいよ!」

ハルが満足げに鳴き、零は苦笑しながら作業を再開した。


その夜、加工場で零は採掘したルビーを慎重に加工していた。

手の中で磨かれるうちに、原石は美しい宝石へと姿を変え、その輝きは加工場の照明を反射して部屋全体を鮮やかに彩っていた。


「これは市場に出すだけじゃもったいないな…町の記念品にするか。」

零はふとそんなことを考え、完成したルビーを手に取りながら構想を練った。

「町の人たちにとって特別なものにできれば、この宝石の価値もさらに高まるだろう。」


ハルが机の上から彼を見下ろしながら、念話で問いかける。

「ねえ、どうやって記念品にするつもり?」

「そうだな…。まずは、町のみんなを集めてイベントでも開くか。それでこのルビーを目玉にしてみる。」

「いいね!みんな喜びそう!」

ハルは尾を揺らし、零のアイデアを楽しそうに受け入れた。


数日後、町では零が企画した記念イベントが開催された。

広場には人々が集まり、零が中心となって作り上げた展示スペースには、大きなルビーが鎮座していた。その美しい輝きは町中の人々を魅了し、イベントは大盛況となった。


「このルビー、本当に素敵ね!」

町の女性たちが感嘆の声を上げる中、子どもたちも興味津々でその輝きを見つめていた。

零は控えめに微笑みながら、その様子を眺めていた。

「宝石の力だけじゃなく、みんなの喜びが加わると、もっと特別なものに見えるな。」


ハルがそばで尾を揺らしながら念話で話しかける。

「この町の人たち、本当に零のこと頼りにしてるよね。」

「まあ、そう見えるだけかもしれない。でも、こういうのも悪くないな。」

零の穏やかな言葉に、ハルは満足げに微笑んだようだった。


イベントの成功は町の人々にとって、零の存在が欠かせないものであることを再確認させた。

零は町の人々にとっての「宝」として、これからも彼らの生活を支え続けると静かに決意する。

その決意が、また新たな物語を生み出すきっかけとなる予感を秘めながら。


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