第10話 将来の夢について
保育園の時、毎月(お誕生日会)があってその月に生まれた子を集めて
みんなで祝う会があって、
毎年自分の誕生月が来ると、保母さんに「大きくなったらぁーなんになりたあーい?」と聞かれるのだが、
一緒の月に生まれた子供たちは「花屋さん!」「パイロット。」「ケーキ屋さん」と口々に叫び、
ひどい子になると、本当は消防署の人になりたいのであろうが
「しょうぼうしゃーあ」と何度もシャウトする子供もいた。
私は、なんて馬鹿な子たちだろう。と思いながら、そんな中、その子たちよりも
もっともっと大きな声で「魔法使い!」と叫んだ。
子供たちは、毎年なりたい正体が変わるのだが、私は保育園での3年間
ずうーと一貫して「魔法使い」だった。
その頃のアニメとかも関係してて影響されてるのかもしれないけれど
私は私で、自分を魔法使いだと思ってた。
庭に咲いている朝顔に向かい、花の首をつかみ
「早く咲け!」とか
翌日その花が咲いていたら、私の魔法ってすごいわ!と思ってた。
(子供のチンピラよね)
でも、不思議な力はこの世に絶対存在すると思うから、私今思うと魔法使ってたかもとも思うし、わからない所。
ある日の事でした。
保育園でみんなで縄跳びをしていた時、「わたち、できない」と言って縄跳びしない子供に、保母さんは、「何をするにも練習が大事よ。頑張って!」
それは私の心に響きました。
(そうよその通り練習よ!頑張るのよ!)
とその言葉をきっかけに魔法使いの練習が始まりました。
保育園から家に帰ると、私は水筒に麦茶を入れて、母に
「特訓にいくわ!」と告げて、そそくさと家を出るようになりました。
母は「いったい何の特訓なの?」と聞いてきましたが、私は答えませんでした。
私は魔法使いが人間に魔法使いだとばれてしまってはいけないって事を
知っていましたから。
さて、私がどんな特訓をしてたか話しましょう。
私は近くの神社に行って、ベンチの上に小石を並べ、黙々と心から
(うごけえー落ちろ!魔法よ!お願い!)と心から念じ
それが、強風かなんかで落ちると、いまのはかぜのせい?それとも私の力?
そうね、風のせいにしてはいけない、私が魔法を使ったんだから。
と一人納得し、ますます力を込めて特訓するのでした。
呪文の練習もしました。自分の中でひらめいたどこの言葉でもない言葉を大声で言ったり叫んだり、時には悲しく、時には笑顔で。そして
(ダメダメ、こんなんじゃ。もっと心を一つ一つ大切にして)とか
(もっと、心を込めて!)とか
(もっと魔法の力を前面に出して!)などあんた全然なってない。と自分に怒ったりつぶやいたり、自分で自分に勝手に涙することもあったのでした。
もちろん、魔法の振り付けも同時にしていました。
そんな毎日、
保育園に行ってから、また外に飛び出し、門限時間にくたくたに帰宅する私が
何してるのか気になった母は
ある日こっそり私をつけてきて
一部始終を見て、とにかく必死なのねと放っておいたそうです。
ただ、ご近所にはすいません。うちの子、ちょっと演劇の練習してましてと
迷惑かからないように、してくれていたそうです。
家に帰ってからも、お風呂の中でも魔法の練習で長風呂したり
布団に入ってからも、あと1回やればきっと。もう一回。あといっかい。
と、魔法の練習に徹夜することもあったのでした。
そんなこんなで、魔法に対する執着心が薄れて、今の私があるわけです
が、そういえば、保育園の時に、私の中の一番良かった友達は
その子も3年間「大きくなったらキリンになりたい!」って言ってたけれど
、さて
友人はどんな努力したんでしょうか?
今度ゆっくりと聞いてみたいと思います。
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