第34話 謎の人狼
冬見の案内通りに向かうと、
そこでは同級生が戦っていた。
「あ、あそこ……!」
年端もいかない
小学生が
戦っているのは……
2mはありそうな
人狼だった。
「小学生には
少々荷が重そうだな」
俺は黒孔雀を引き抜き
そのまま飛天を撃ち出した。
それに気づいた
人狼はさっとジャンプして
避けてしまう。
なかなか俊敏な奴だ。
俺達の人数に
不利と見たのか
人狼はそのまま
木々を伝って逃げていった。
賢い幻獣だな。
黒孔雀を鞘に戻し
襲われていた生徒に
手を差し伸べる。
周りを見てみるが
カラスがいない。
どうやら1人で
逃げてきてしまったようだ。
「ひ、ひぃ……!」
俺にさえ怯えて
木の根本にうずくまる
同級生。
とてもじゃないが
サバイバルは
続けられそうにない。
「理事長、この子を回収してくれ」
『了解~~』
俺達についてきた
カラスが羽を広げたかと思うと
それはまたたく間に大きくなり
マントのように同級生を包みこんだ。
次の瞬間には
同級生は転移したようで
いなくなっていた。
「なんなのかしら、あの人狼」
夏芽がう~~んと唸る。
考え事をするかのように顎を撫でた。
「さてね。ただの野良だと良いが……」
「け、けっこう俊敏だったよね」
不安なのか冬見が
持ってきたぬいぐるみを
もふもふと触っている。
まぁ、小学生には
ちょっとばかし怖い幻獣だったな。
ホラーに出てくる化け物っぽいというか。
ひとまず逃げていったものを
追いかけてもしょうがない。
一旦戻って先輩方に
報告するとしよう。
テントに戻ると
二人はまだ眠そうで
呑気にあくびなんてしていた。
俺達は見てきたことを
報告することに。
「ふむ、俊敏な幻獣ですか……」
「少し気になるな」
危機感は感じていないようだが
気にはなったようだ。
まぁ、どのみち理事長が
カラスを周辺に放っている以上
根本的な危険はないと言えるが。
「飯塚、調べてきますか?」
「ああ、珀斗。俺と来い
女子連中はテントで留守番だ」
そう言って珍しく
飯塚先輩がやる気を見せ
木陰から立ち上がってきた。
まぁ危険を調べるのには
三人の中では俺が同行するのに
適任か……。
「了解しました」
その決定に夏芽がぶーぶー
文句をたれ始めた。
「え~~私たちは留守番!?」
「わ、私は留守番でいいかな……
怖いし……」
内気な冬見はそこまで
やる気がないようだ。
小泉先輩は体が
ウズウズ動いていて
どうにも戦いたくて仕方なさそうだが
後輩たちの警護に
当たるべきと考えたのだろう。
「それじゃあいくか」
俺は飯塚先輩と
森の中を散策することになった。
謎の人狼……。
まぁ確かに気にはなる。
子どもとは言え
幻術師を追い詰める強さだ。
最近の雑魚とは一線を画す
強さなのは間違いなかった。
周囲を調べていると
無惨な姿になったテントを見つけた。
どうやらここを拠点としていた
生徒たちがいたようだ。
「理事長……
ここの生徒たちは
もう回収したのか?」
『もちろんさ
なかなか厄介な幻獣だよ
君たちも気をつけたまえ』
飯塚先輩がカラスに質問する。
ふむ、幸いにも犠牲者は
いないようだ。
しかし先程の状況とは違い
上級生もついていたはず。
一体では厳しいだろうに。
「おそらく連中は群れで
活動しているようだな……」
「どうします?
一旦戻りますか?」
「平気だろ……
俺とおまえなら……」
飯塚先輩の信頼はありがたいが
俺も正直ちょっと怖くなってきたよ。
そんなに実戦経験ないからね、俺。
などと言っていると……。
「ガァアアアアアアアアアアア!!」
無数の人狼が飛び出てきた。
一旦逃げたのは
仲間を呼ぶためだったのか!!
「ふむ、下がってろ珀斗」
飯塚先輩が
俺の前に立ち、人狼達を睥睨する。
「俺の術式を見せてやる……」
おお、なんだか楽しみだ。
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