第6話 人心地
腹の皮が張れば目の皮が
「おや、リューリちゃんは、おねむか」
彼女の様子を見たジークが、愛おしげに微笑んだ。
「色々あり過ぎたし、疲れるのも無理はありませんね。アデーレ、私たちの部屋で寝かせてあげましょう」
ローザの言葉に、アデーレが頷いた。
「はい、では、私が連れて行きますね」
そう言うと、アデーレはリューリを軽々と抱き上げた。
「それじゃあ、また明日の朝に食堂で合流しよう。おやすみ」
ジークとウルリヒに見送られ、リューリはローザたちの宿泊部屋へと運ばれた。
部屋に着くと、ローザが口を開いた。
「眠いかもしれないけれど、リューリちゃんも、寝るのはお風呂に入ってからにしましょうね」
――たしかに、生家にいた時も入浴などロクにさせてもらえなかったし、汚れたままベッドに入るのは申し訳ないな。
リューリも、そう考えて納得した。
「……分かった」
「では、私が手伝おう。浴室は、こっちだ」
浴室の扉を開けて手招きするアデーレを見て、リューリは戸惑った。
「じ、自分でできるから、大丈夫だ」
「まだ小さいのに、遠慮しなくてもいいのですよ。私も手伝いますから」
ローザも腕まくりをして、やる気満々な様子だ。
結局、リューリは二人の手で、たっぷりと泡立てた石鹸と温かな湯で全身を念入りに洗われた。
いつでも好きな時に湯を使えることから、この宿には湯を沸かす魔導具――魔法の力を込めた道具類――が設置してあると思われる。
そもそも
伸ばしっぱなしでボサボサだった髪も、洗って汚れを落とし、温風を出す魔導具で乾かすと、すっかり軽くなった。
「リューリちゃんの髪は、不思議な色で、すごく綺麗だな。私は、こんな赤毛だから、子供の頃はニンジンとか言われて、からかわれたものだ」
アデーレが、リューリの髪を
「そうか? アデーレの髪も、赤い花のようで綺麗だと思うが」
リューリが答えると、アデーレは頬を染め、嬉しそうな顔をした。
「今日は、これで我慢して
そう言って、ローザがリューリに着せた寝間着代わりのシャツは、大人用の為だぶだぶだったが、滑らかな肌触りで良い匂いがした。
アデーレとローザが寝支度をしている間、先にベッドに入ったリューリは、その柔らかさと温かさに感動していた。
生家では、屋根裏部屋に放置された
身体を丸めていなければ、毛布から手足がはみ出て寒い為、リューリは縮こまって寝るのが癖になっていた。しかし、ここなら身体を伸ばしても大丈夫なのだと気付いて、彼女は大きく伸びをした。
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