ニコちゃん先生2

 前をトコトコ歩くルビンの後について行っていると、他の生徒から声をかけられた。

仲良し二人組のオールとトレイだ。


オールはずっと鼻水を垂らしている元気な奴で、トレイは低学年にしては珍しく敬語を使う礼儀正しい子だ。


オールが俺を指差して言った。

「あー! ニコちゃん先生だ! 一緒に鬼ごっこしよーぜ!」

「先生今ちょっと忙しいから後でね」

「えー! どこ行くの何するのー?」


「すみません先生。ルー君、先生困ってるから。二人でやろうよ」

押しが強いオールをトレイがたしなめる。


「やだー! 教えてくれるまで付き纏う!」

オールはブンブンと首を横に振る。


俺は教えた方が早いと判断して

「ルビンのお父さんとお話があるんだよ」

と答えた。


「ふーん。……ルビンのおとーさんってなんか怖いんだよなぁ。先生大丈夫かよ?」


オールは急にテンションが低くなり、俺の心配までし始めた。


裏稼業の人間はどことなく雰囲気に威圧感でもあるのだろう。

子供たちの間でもルビンの父親、つまり情報屋の息子は怖がられている。


こうなるのを恐れて常にニコニコしていた結果、俺はニコちゃん先生という愛称をつけられてしまったわけだが。


「大丈夫大丈夫。ほら、鬼ごっこしておいでよ」

俺がそう促すと、オールは首を横に振った。


「いや、やっぱやーめた。途中まで先生についていってやるよ! 心強いだろ? レイ君も行くよな?」

「えー。うん。まぁいいけど」


俺は思わず苦笑した。

懐かれているというか舐められているというか。

複雑だ。


「うん。じゃあ途中まで、ね」

「おう。レッツゴー!」

ということでオールたちもついてくることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る