現在3

 カブトとレンジは事務所に入った。

二人の視界に目つきの鋭い髭面が映り込んだ。


「来たか。トリカブト」

男は低い声でカブトに言った。

「隣は誰だ」


「レンジ。今日からカブトのパートナー。よろしくな」

レンジの挨拶を聞いて男は不審そうに片眉を上げた。


「聞かねぇ名だ」

「ああ。『なんでも屋』って言った方が伝わるかな?」

男は得心がいったと言うように頷いた。


「お前が例の記憶を失くしたなんでも屋か」


レンジは満足そうに答える。

「おう。なんでも屋だから人の手伝いをする。今回手伝うのがカブトってだけだ。何も不思議なことはねぇだろ?」


「そうだな。……記憶を失くしたなんでも屋と、脱獄した復讐者か。これまた妙なコンビだな」

男の言葉を聞き、レンジがカブトを見た。


「脱獄?」

カブトは無表情のまま男を見ている。


男は呆れたようにため息をついた。

「そんなことも知らずにコンビを組んだのか」

「こいつが勝手に言っているだけだ」

カブトは不快そうに言った。


そんなカブトを見て、男は少し笑った。

「まぁ別にどうでもいい。お前らがどういう関係だろうが、俺のやることは変わらない」


「そうだ。今回の仕事はなんだ。さっさと教えろ。カルミアに繋がる手がかりはあるのか?」


男は

「急かすなよ」

と、どこか楽しげに言った後

「実はな。ついにお前の望む情報が手に入った」

と言った。


カブトの体がピクリと反応する。

「勿体ぶらずにさっさと言え」

男はニヤリと口角を上げた。


「今回の仕事は……」

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