第10話 暴かれる闇

 選挙がマスコミの思惑と違う結果を招き、むかついたのか再選後も佐藤知事降ろしの活動の手を緩めることはなかった。マスコミ・メディアが気にする購読者・視聴者は、「もういい加減にしろ」と定期購読契約している新聞の解約に繋がり始めていた。その危機感を回避するため「いやいや、ほら、私たちが正しかったでしょ」と逆転ホームランを打たんとばかりに重箱の隅を楊枝でほじくる手法で手を引かない姿勢を示していた。

 オールドメディアを有害な組織と主張する橘は、新たに入手した情報を公開した。それは綿世康秀西播磨県民元局長と黒川知子と不倫していた事ではなく、その黒川が怪文書(告発文)作成に至って情報を与えていたのではないかと言うものだった。橘は怪文書の内容が多岐に渡る点から協力者がいると疑いを抱き、百条委員会に呼ぶべきではないかと訴えるものだった。

 不手際があったとされる犯人捜しの段階で、喜多河副知事が疑わしい者に聴取し、元県民局長の聴取が追え、もう一人に聞こうとした際に元県民局長に電話が掛かってきた。その者の同意を得てスピーカーフォンにさせた。その内容は…


黒川「えっ、告発文は綿世さんが撒いたんですか」

綿世「うん、ここだけの話」

黒川「それって、警察に撒いたんですか」

綿世「警察と議会とマスコミ」

黒川「安楽(安楽元副知事)ちゃんも絡んでいるんですか」

綿世「絡んでへん」

黒川「ほかの県民局長も、なんもなく、綿世さんだけで?」

綿世「そう、僕単独でやってん。事実上な」


 このやり取りから黒川は告発文を蒔く手伝いはしていない。寧ろ、驚いている状態かその行為が時期早々と困惑しているのが読み取れる。綿世が言う「事実上な」は撒いたのは自分だが協力者はいることを伺わせるものだった。

 当時の佐藤知事がパワハラで事実とされた佐藤が机を叩いた出来事の背景はこれだ。兵庫県の埠頭を新しくすると言うプロジェクトが財政難の中、検討されている際、猪俣派の勢力から利権絡みで推進を要望され黒川は、既成事実を作ろうと佐藤知事の承認を得ないままそのプロジェクトを新聞に掲載させた事で秘密漏洩に怒り、佐藤知事は机を叩いた。また、佐藤知事が推進していた政策のひとつに「空飛ぶクルマ」があった。原案は2つあった。A案は猪俣知事時代から推進されていた計画案で担当は産業労働局だった。その次長が黒川知子だった。佐藤知事はB案を推していた。しかし、須磨新聞にA案が掲載された。産業労働局は「知事と話し合う時間がなかった」と釈明した。佐藤知事は相談もなく新聞発表されたことに「聞いていない」「勝手にやるな」と叱責した。思いが通らず職員OBたちに面子も断たず潰された腹いせにパワハラだと騒いだのは黒川友子だったようだ。ちなみに産業労働常任委員会に菱尾議員がいた。菱尾議員と黒川知子は繋がっていた。菱尾議員の主張する捏造は、既得権を行使できなかったか、依頼された企業からの叱責に対する腹いせでもあったかも知れない。

 勝手に事業を進めれば、民間企業であればこの程度の処分では済まない。


 佐藤知事は、元局長に度重なる職務専念義務違反を理由に停職三か月を課していた。   

 

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