第2話

びくりと肩を振るわせるのはこれで何度目だろう。



この甘ったるい香りと、間延びした声を聞くと身体が固まってしまう。



背後に存在感を感じながら振り返れなくって、気味の悪い夜道で息を飲むこの感覚が嫌でたまらない。



息がつまるような、喉元になにかつっかえて今にも吐きそうになる感覚。



「ひーなーたーちゃ〜ん。遊ぼ?」



あたしの名前をまるで遊ぶように呼びながら、固まって棒立ちしてるあたしを背後から覗き込んでくるこの男。



相変わらず人を小馬鹿にしたような薄ら笑いが特徴的で、狐みたいに吊り上がったニヒルな眼差しはいつ見ても怪しげ。

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