#9「一夏の思い出」B
車内の席順は僕は助手席で、雷男と育鈴さんは後部座席に座っている。
「あ、あの由人様。今日は防子ちゃんは一緒じゃないんですか?」
「ああ。なんか柔子ちゃんに誘われてどこかに出かけたらしいんだ。その事はこっちは何も聞いてなくて」
「そうだったんですか...どこに行ったんでしょうね?」
「さぁね...」
出発して一時間、海に到着した。日光が差し込んでいてじりじりまとわりつくような暑さだけど、海水浴をしている人達もそれなりにいる。
雷男は服の下に水着を着ており、服を脱いで早々にナンパに行ってしまった。ここに女性はもう二人もいるのに、プレイボーイな奴だな...。
僕は砂浜にシートを敷いて荷物を置いた。雷男以外の各々も下に水着を着ていて、僕も含めて各々に服を脱ぎ始めた。
それにしても一応男の前なのに、女性陣はよく平気で服を脱げる物だ。水着を着ているとは言え、服を脱いでいく姿は...何だかそそられる物があるな。育鈴さんは水色のビキニで愛剥路は...
「愛剥路のそれは...競泳用の水着じゃない?」
「だ、だって...恥ずかしくて//」
「海でそれ着る方が恥ずかしくない?」
「いいんじゃないかしら?面白いじゃな〜い。」
「まぁ、とりあえずせっかく海に来たんだから、海に入りましょうか!」
「は〜い」
「は、はい!」
僕達三人は海に入って水のかけあいをしたり、育鈴さんが持ってきたビーチボールを持って遊んだりした。
水に滴っていく二人の姿を僕は見惚れてしまった。雷男の奴、勿体無い事したな。
遊び終えた僕達は自分達の場所に戻って、僕は少し散歩をする事にした。
僕達のいる場所からだいぶ離れた所に二人の女性の姿があった。近づいて見てみると、その二人は防子と柔子ちゃんだった。
「二人共、こんな所でなにしてるの?」
「由ちゃん!」
「よ、由人さん...何でここに...?」
「えっと、みんなで海に行こうって事になって...」
「いやいや、仕事をサボってていいんですか?」
ブーメラン発言をしてきたよこの子...
「とにかく!今日は防子と二人だけの時間を楽しんでいるから邪魔しないでもらえますか?」
「わ、分かったよ...」
柔子ちゃんの圧が掛かった態度に僕はその場を離れてしまった。
場所に戻る最中に愛剥路の姿を見かけた。路上販売に捕まっているみたいだ。路上販売をしているのは怪しげな風貌をした老人だ。
「そこの兄ちゃんも宝石見ていかねえかい?」
宝石...前のカテラスの事を思い出すな。
「い、いくらなんですか?」
「そうだなぁ~大体50万ぐらいか?」
「高っ!いやでも、宝石だったら安い方?」
「な、何でここで売ってるんでしょうか...?」
「案外こういう所で売れるかもしれねえだろ?」
「そ、そうなのかな?」
するとそこに育鈴さんがやってきた。
「二人共こんな所で何してるの〜?」
「姉ちゃん宝石好きか?安くするぜ?」
「いや、買わないでしょ…」
「これ、全部偽物じゃないですか〜?」
「「え!?」」
「何!?この
「だってこれプラスチック磨いているだけじゃないですか〜。」
「「気づかなかった…」」
「み、見抜かれていたとは…」
そしてさらに、雷男がやってきた。
「全然捕まえられなかったぜ...ってみんな揃ってなにしてるんだ?」
僕は雷男に今の状況を説明した。
「偽物を売ってたのかよこの爺さん...」
「しかし、何故お爺さんはこのような商売を?」
「こうでもしなきゃ孫を育てていけねぇからな。」
「そうですか、お孫さんのために…」
「よし!じゃあ今から宝石探しでもするか!」
「な、何を言っとるんじゃお前は!?」
「無かったら探せばいいだろ?海だったら真珠ぐらいならあるんじゃあねえか?」
「あるかな?」
「でも面白そうね〜。」
「愛剥路は泳げる?」
「はい!泳げます!」
「よーし!じゃあ、じいさんはここにいろよ?」
「こら、待たんか!」
それから僕達は宝石探しを始めたが、簡単には見つからない。石三さんは僕達に疑問を突きつける。
「何故こんなジジイの言う事を信じられる!?もしこれが、嘘だったらどうするんだ!」
「だったらそれでもいいぜ、ここで本物を見つけて本当にすればいいだろ?」
その後も宝石探しは続いたが、宝石は見つからなかった。
「悪いな、じいさん。見つけられなくて。」
「いいんだ。必死になっているお前さん達を見ていたら、何だかワシのやっている事が恥ずかしくなってくるわい。」
「ちなみに今までもこんな事してたんですか?」
「いや、今日が初めてだ。孫のためにと思ってすぐに大金を、手に入れようと思って…バカだなワシは…。」
「石三さん…」
「もう二度こんな真似はせんよ。真っ当に働くとするよ。」
「それがいいですよ。」
「そうじゃねぇと孫に合わせる顔がなくなっちまうもんな!」
「そうだな。では、ワシは帰るとしますか。じゃあな兄ちゃん達。」
「さようなら。」
石三さんはその場を去って行った。
「それにしても、あんな商売を海でする奴がいるんだな!」
「場所は関係ないと思うけど...」
「で、でもお爺様もちゃんと改心したみたいで良かったです...!」
「そうね〜。あのまま続けてたら、お孫さんが可哀想な事になっていたわね〜。」
そんなこんなしている内に当たりはすっかり日が暮れてしまったので、僕達は屋敷に戻る事にした。
防子達は柔子ちゃんに釘を刺されたし、もうあの場にいない可能性もあるから、とりあえず気にしない事にした。
車内は、後部座席に乗っている二人はすっかり眠りに就いていた。
「今日はありがとう愛剥路。急な事にわざわざ対応してくれて。」
「そ、そんな...私は由人様の為にと思ってやった事なので...気にしないで下さい。」
「でも...」
「それに、私も由人様の事を心配していたんです。戦いの日々でお疲れになっていないか私も心配していたので。」
「...そうだったんだ。それは心配かけて悪い事しちゃったね。次はもっといっぱい人を連れてどこかに行こうよ。」
「はい!」
次は...防子も一緒に...。
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