#8「押し付けメイド」B

 屋敷に戻り、改めて朝食を取る事になった。 朝食をとりながら、防子と雷男は屋敷に同行した拳也君と博士に自己紹介をしたと同時に拳也君達も自己紹介をした。


「メイドをしながら超戦士をするなんて大変じゃないですか?防子さん」


「確かに大変かもしれない...でも私も由ちゃんの役に立ちたいから自分の意思で決めました!」


 強引にしちゃった感じはあるけど、本人もやる気はあるからいいか...


「いやぁ〜お美しいですね〜お母様!まるで二十代みたいですよ!」


「そんな事言ってくれるなんて、お世辞が上手いお坊さんね!」


「いや、髪の毛ないですけど、俺執事っス!ちゃんとタキシード着てるじゃないっスか!」


 雷男は本当に女性なら誰でも口説くんだな。しかも既婚者に。博士も博士で雷男の事を修行僧と勘違いしてるけど...

 すると外から激しい足音が聞こえて部屋のドアをバン!と音が響くようにに開く音がした。入ってきたのは柔子ちゃんだ。


「知らない男とおばさんがいるわね!防子にこれ以上近づくんじゃないわよ!」


 どうしてこの子は自分から敵を作りに行くんだろう?過去に何があったらこんなに変わってしまうんだろう?


「失礼な事を言うメイドさんね!私はこの家の家主とは血縁関係にあるのだけれど?」


「それは失礼したわね。でもそこのお子様は何をしでかすか分からないじゃない?」


「な、何もしませんよ...」


 拳也君困ってるよ...そりゃいきなり知らない人から邪険に扱われたら誰だってそうなるよね。


「柔子...お前こんな年下に殺気だった態度とるんじゃねぇよ。みっともねぇ。」


「釘は早めに刺しておいた方がいいじゃない?」


「何でこんな奴がメイドとして雇ってもらっているのか不思議なくらいだぜ」


「アンタだってナンパするくせに雇ってもらってるのが不思議なくらいよ」


「由人はいいのか?」


「まぁ、由人さんの専属メイドになっている以上はね。さすがにメイド長には逆らえないわ。私と変わるっていっても聞いてくれないし...」


 そりゃあ、サボり癖があるメイドを専属になんかさせないと思うし、悪いけどこんな敵を作るようなメイドさんは僕は嫌だなぁ...


「柔子ちゃん。僕ちょっと防子と話があるからさ。朝食片付けてもらっていいかな?」


「...かしこまりました」


 柔子ちゃんは嫌な様子を醸し出しながら、渋々朝食を片付けるために部屋から出て行った。


「防子、昨日の話をしてもらってもいいかな。」


「わ、分かりました。大したことではないんですけど、柔子ちゃんとは高校からの同級生で、高校に入ってから初めて出来た友達で...」


 防子は中学までの友達はみんな別々になってしまい、高校に入ってから初めての友達だった。

 柔子ちゃんは友達が多い方ではないので、防子の事をとても大切な友人だと思っていた。だが大切に思うあまり防子に近づく同級生を片っ端から遠ざけるようにしていた。

 僕にはそんな事はしてこなかったから、これを聞いて驚いた。防子がバイトに明け暮れる様なってからは防子と一緒のバイト先で働いたり、相談に乗ったりしていた。そしてこの屋敷に拾われて働くようになってから数週間後に柔子ちゃんもメイドとして雇われる事になったらしい。


「でもどうやって柔子ちゃんはここに?」


「聞いてみたんですけど、答えてくれなくて...」


「とりあえずあの性格は昔からって事か。全くそんな奴がどうやって雇ってもらったんだが...」


「私の事をもうちょっと信頼してくれればいいんですけどね...」


「いや、それは単に防子さんに依存しているのだけでは...?」


 すると警告音が鳴り響く。


「カテラスが現れたみたいですね...。」


「よし!行くぞ防子!」


「うん!」


「頑張ってこいよー!」


 雷男からの激励を受けて僕と防子、拳也君と博士のそれぞれの乗った車はカテラスがいる現場に急行した。



 現場は公園ではなく、能野町の住宅街だ。


「きゃー!」

「痛てー!」


 そこにはジュエリーカテラスが色んなカットをされた宝石を飛ばして町の人を襲う姿があった。僕達三人は急いで物陰に隠れて武着装を行う。


 アリツチップをアリツフォンに挿し込む。


[Weapon In]

[Defence In]

[Martial Arts In]


電子音声の後に待機音が鳴る。


「「「武着装!」」」


掛け声を言って、CERTIFICATIONの文字をタップした。


[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]

[CERTIFICATION. In Charge of Defence.]

[CERTIFICATION. In Charge of Martial Arts.]


再び電子音声が聞こえた瞬間、僕達の周りに光が纏い、「アリツウェッパー」「アリツシーリア」「アリツシャーマ」に武着装した。


 僕達はジュエリーカテラスの前に姿を現す。

 するとジュエリーカテラスはこちらに宝石を飛ばして攻撃する。僕達三人は腕を交差させて、攻撃を防いだ。


「ねぇ、この宝石って本物なのかな?シャーマ君。」


「ど、どうなんでしょう?腕から飛ばしてくるし、相手も宝石だし、本物...なのかな?」


 そして、またも宝石を飛ばしてくるジュエリーカテラス。


「いや、そんなのどっちでもいいから...シーリア、バリアだ!」


「うん!」


 シーリアは前に出てアリツフォンを取り出し、アリツバリアを発動する。シーリアは球体上のバリアーに包まれた。そして宝石を防ぐ事に成功する。


「よし!バリアを飛ばせ!」


 シーリアはアリツフォンにアリツブレイクチップを挿し込んだ。


[Break Standby]


待機音が鳴り、Breakの文字をタップする。


[Defence Break]


 アリツバリアのディフェンスブレイクを発動させた。シーリアが指を指すとバリアはジュエリーカテラスに高速で向かって行き、そのまま衝突した。


「グオォ!?」


 バリアはクリーンヒットし、ジュエリーカテラスは地に膝をついた。


「よし今だ!シャーマ!」


「はい!」


 アリツフォンを取り出し、アリツレッグを発動して両足を強化した。そのままアリツフォンにアリツブレイクチップを挿し込んだ。


[Break Standby]


待機音が鳴り、Breakの文字をタップする。


[Martial Arts Break]


 アリツレッグマーシャルアーツを発動して、上空に飛び、ジュエリーカテラスに飛び蹴りを喰わらせた。


「グオォァァァ!?」


 飛び蹴りを喰らったジュエリーカテラスは吹っ飛ばされて人間の姿に戻った。

 僕達はその場から去って、物陰で武着装を解き、拳也君に博士に救急車を呼ぶようにお願いした。拳也君達は研究所、僕達は屋敷にそれぞれ戻る事にした。

 屋敷に戻ると桃江さんが僕達の元にやってきた。


「お二人共、柔子さんを見かけませんでしたか?」


「いや、見てないです。」


「そう、また勝手にサボったのかしら...」


 ...柔子ちゃんには悪いけど、防子が専属になって良かったよ。と僕は思う事にした。

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