#7「強弱ライダー」B

「由ちゃん。この人は屋敷の乗り物を整備をしてくれている蔵馬 愛剥路くらばめへるさん。」


「防子さんが手の空かない時はアタシがあんたを現場に送るわ!よろしく頼むわよ!」


 なんだか堂々として頼りになりそうな人だ。チャックで胸元を開かせているのは目のやり場に困るけど...


「いや〜今日もカッコイイっスねー!愛剥路さん!男の俺でも惚れ惚れする程の佇まいっスよ!」


「ふふっ、ありがとう雷男くん。あなたはお世辞を言うのが上手いわね。」


「いえ!本心から言ってるっスよ!」


 雷男のナンパも軽くあしらっている。それにしても一人で整備しているのだろうか?そう考えていると向こうから誰かがこちらにやってくる。


「ここにいたんですか。愛剥路さん。屋敷の自動車整備、お疲れ様です。」


 やって来たのは環助さんだった。雷男を探しに来たとの事。仕事で手伝ってほしい事があるらしいので、雷男は環助さんに連れて行かれた。


「愛剥路さん。今、時間大丈夫ですか?良かったら僕の部屋に来ませんか?」


「あら、あなたもアタシをナンパかしら?」


「いえ、これからお世話になるので少し話をしたいと思いまして...」


「ま。これから世話になるから、仲を深めるというのもいいかも知れないわね。良いわよ。案内して頂戴。」


「ありがとうございます。」


 というわけで愛剥路さんを僕の部屋に案内した。

 案内している最中も屋敷の人達から感謝の言葉が聞こえて来ており、どれだけ慕われているのが良く分かる。

 部屋に入り、僕と愛剥路さんはテーブルを囲んで椅子に腰掛けた。防子には茶菓子を用意してもらっている。僕は早速、目に入っている疑問をぶつけた。


「何でヘルメット被ったまま何ですか?」


「そんなのアタシの勝手でしょ。」


「いやいや、これから世話になるんですからお互いの顔を知っておかないと。」


「そ、それは...」


「お菓子の用意が出来ましたよ〜。」


 防子はワゴンに乗せて茶菓子を運んできた。クッキーやビスケットを乗せたお皿、そして紅茶をテーブルに並べていく。


「さぁ、召し上がって下さい。」


「あ...ありがとう。でも気持ちだけで結構よ。」


 どうやらよっぽどヘルメットを外したくないらしい。しょうがない。すこし意地悪するしかないか。


「食べないんですか?せっかく防子が用意してくれたのに...残念ですね。そうまでして外したくないですか。」


「だ、だって...」


「僕は顔を知らない人の事は信用出来ないな〜。」


「...」


「じゃあ、僕が一つ秘密を言うのでそうしたら脱いで下さい。」


「秘密って...?」


「僕の両親は小さい時に亡くなったんです...だから愛情という物が分からないんです...。」


「えっ?」


「親戚や防子の両親にお世話になってましたけど...僕って人見知りだし、やっぱり血が繋がっている訳じゃないから、遠慮してたんです。だから防子や他の人達が家族と楽しく過ごしているのが羨ましいかったんですよね。」


「そうだったのね。」


「す、すいません!こんなの秘密とかじゃなかったですよね!」


 しかし、愛剥路さんは何も言わずにヘルメットを外してくれた。ブロンド色のロングヘアーが露わになった。


「そうだったんですね...。誰にも甘えられずにいたなんて、辛かったですね...由人様」


「は、はい...」


「お、おこがましながら、私でよければ甘えても良いですよ?あっ...でも私なんかじゃ役不足ですよね...ごめんなさい...。」


 さっきの堂々とした佇まいとは違って、一歩引いたような印象だ。ヘルメットを脱いだらここまで変わる物なんだろうか?


「私は自分に自信がなくて、でもバイクで運転していると自信が出てくるようになって、それでヘルメットを被ってる間は堂々とする事が出来るようになったの。でも、やっぱり素顔の時は駄目になっちゃうの...」


「そうだったんですか。それなのにすいませんでした。外すように誘導してしまいまして...」


「いいんです...これからお世話になるのに顔が知らないなんて良くないですので。」


「...ありがとうございます」


「あと、その私にはそんなにかしこまらなくていいですよ?私はあなたの使用人ですから。」


「いや、使用人じゃなくて対等な立場でいようよ。愛剥路。」


「...!はい!」


 これでようやく打ち解けたかな?ついあんなことを話してしまったものだから、防子にも私にも甘えて良いですよ!なんて言われてしまったけど。

 すると、アリツフォンから警告音が鳴る。防子は片付けがあって、それにせっかくだから愛剥路さんに試しに送ってもらったら?と提案されたので乗っかる事にした。


「さっそくお願いするよ!愛剥路!」


「はい!」


 急いでガレージに向かう。愛剥路はヘルメットを被ってバイクに跨った。


「さぁ!行くわよ!由人君も被りなさい!」


(バイクで行くんだ...)


 愛剥路からヘルメットを渡され、僕もヘルメットを被り、愛剥路の後ろの乗った。


「しっかり捕まってるのよ!それじゃあ行くわよ!」


(防子以外の女性にこんなに密着したの初めてかも...。)


 僕達は現場に向かった。それにしてもこうやって女性の人を抱きしめていると、何だか安心するな…大切な人を抱きしめるってこういう物なんだろうか?


「…ちょっと強すぎ何じゃない?」


「ご…ごめん…」




 現場に到着すると、そこには不在の家を爆破しているカテラスの姿あった。


「愛剥路、なるべく遠くに離れていろ。」


「分かったわ。」


 僕は人気のいない場所に移動した。

 アリツフォンにアリツチップを挿し込む。


[Weapon In]


 電子音声の後に待機音が鳴る。


「武着装!」


 掛け声を言って、CERTIFICATIONの文字をタップした。


[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]


 再び電子音声が聞こえた瞬間、僕の周りに光が纏い、武器の超戦士「アリツウェッパー」に武着装した。


「お前か!家を爆破させてるのは!何故家を爆破させる!」


「建物が崩壊する様や砕ける音が好きだからさ!」


「何者だ!お前!」


「アタイはボンバーカテラスさ。喰らえ!」


 ボンバーカテラスは豆電球を投げて来た。何故に豆電球?そう思って僕はアリツガンで撃つと爆発した。


「続いて喰らえ!」


 次はシンプルに地雷を出した。

 まともにボンバーという名に恥じない物を出した来た。すると地雷は動き始め、こちらに近づいて来た。僕は地雷に追い付かれてしまい爆発を受けてしまった。


「うあぁ!痛ったぁ〜!」


「もういっちょだ!」


 今度はヨダレをたらしているゴリークが現れた。ゴリークはこっちに近づいてきた。

 展開から察するに、これも攻撃したら爆発するのだろう。ゴリークから離れアリツガンで撃つとゴリークはやはり爆発したのだった。


「やっぱりな!今度はお前に爆弾を当ててやる!」


 僕はアリツボムを取り出す。すると相手も自前の爆弾を手に取っていた。

 同時にそれぞれを標的にして爆弾を投げる。ボンバーカテラスの投げる速さはこちらより早く、僕に爆弾が命中してしまった。しかし、カテラスには命中しなかった。


「は、速い!」


「それだけじゃない。アタイは狙いも正確なのさ!お前はアタイを倒す事はできないのさ!ボ~バッバッバッバ!」


「投げる速さはお前には勝てない...だったら撃てばいいんだ!」


「あ~?」


 僕がアリツガンを撃つと銃口からアリツボムが発射され、カテラスに命中した。


「ボバ!?銃から爆弾が!?」


 アリツガンを連射し、アリツボムをカテラスに全て命中させる。


「な、何故そんな正確に…?」


「アリツガンにはホーミング機能が搭載されてるんだよ!これで仕舞いだ!」


 僕はアリツガンにアリツブレイクチップを装填する。


[Break Standby]


「建物だけ爆破するのを好んだり、人々を撃ったりするのを好んだり、カテラスっていうのはどうしてこんな極端なんだ!」


 トリガーを引き、アリツガンのウェポンブレイクを発動させた。


[Weapon Break]


「ゼイヤーー!!」


 トリガーを引くと特大の爆弾が撃ち出された!


「ちょ、ぼ、ボバーーー!?」


 カテラスは人の姿に戻り倒れた。

 僕は愛剥路の元に行き、バイクに乗って屋敷に戻った。無事に屋敷に戻った後に愛剥路に改めてお礼を言った。


「ありがとう。愛剥路。これからも頼めるか?」


「アタシ達は対等...なんだろ?」


 僕は愛剥路のヘルメットを外した。


「あっ//そんな勝手に...//」


「でも素顔のままでも、もうちょっと自信もってもいいんじゃない?かわいいしさ。」


「そ、そんな事言わないで下さい...//」


 変わった所があるけど、心強い仲間が出来た!本当にこの屋敷は退屈しないな!

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