第5話 迫る影と、警告の音


「どうしてこんなところで…」


智紀は心の中で呟きながら、暗く沈んだ空を見上げた。遠くの山々からは不穏な音が響き、空気を引き裂くような低い音が村の空気に染み込んでいる。その音はただの風の音ではなく、どこか重苦しく、警告を発しているようだった。


目の前には、村の入口を飾る古びた木製の門が立っていた。門は年季が入っており、時折軋む音を立てて風に揺れている。そこに立ちすくんでいる智紀の視線が、門の上にかかる低い音に引き寄せられる。


「どうした、智紀?」


背後から声がかかり、智紀ははっと我に返った。振り返ると、カイルが腕を組んで立っていた。彼の表情はどこか厳しく、真剣そのものである。


「いや、ちょっと気になる音がして…」


智紀が答えると、カイルはしばらく黙った後に眉をひそめた。耳を澄ますと、再びその音が響いた。


「それは、警告の音だ。」


「警告?」


智紀は驚き、カイルを見た。カイルは真剣に頷き、言葉を続ける。


「この村では、何か重大な事が起こる時に鳴る音だ。時々、山の方から響いてくる。だが、今回は少し違う。何かが迫っているのかもしれない。」


その言葉に、智紀の背筋に冷たいものが走った。足元がふらつくような不安感が彼を包み込む。警告の音が何を意味しているのか、それがわからないだけに余計に不安が募る。


「でも、どうして今までこんな音が鳴ったことがないんだ?」


智紀は疑問を口にした。これまで静かな村で過ごしてきた日々の中で、こんな音を聞いたことはなかった。カイルはじっと村の方を見据え、ため息をついた。


「過去にも何度か鳴ったことがある。しかし、いつもその理由は誰もわからなかった。村の人々も長年、この音を警告として受け入れていた。しかし今回は、ただ事ではないと思う。」


カイルが周囲を見渡した後、再び智紀に向き直った。


「だが、君には関係があるかもしれない。」


「俺に?」


智紀は驚いてカイルを見つめた。カイルの目が真剣であり、その言葉が智紀の胸に強く響く。


「君の持っている力、そして今、この村に起こりつつある状況、すべてが関係しているかもしれない。」


その言葉に、智紀の心はざわついた。自分がどうしてこの村に来たのか、そして自分が持つ力が一体何なのか、まだ理解できていない。それでも、カイルの言葉が何かの暗示のように感じられ、無意識に深く息をついた。


「君が持っている力が、この村の未来を左右するかもしれないんだ。」


カイルの声には、少しの優しさが込められていた。それが智紀を少しだけ安心させた。とはいえ、まだ自分に何ができるのかはわからない。ただ、カイルの言葉に少し希望を見出していた。


その時、不意に遠くから異様な音が響いた。それは、ただの風の音ではなく、どこか生き物のような不気味な響きが混じっていた。


智紀は急に冷たい風に身を縮めながらも、目を凝らしてその音がする方へと目を向けた。遠くの山の彼方に、黒い影がうねりながら広がっているのが見えた。その影はまるで、空気そのものが歪んでいるかのように、形を変えながら広がっていく。


「これは…」


智紀はその光景に言葉を失った。警告の音が鳴り響く中で、何かが近づいている。それは、ただの自然現象ではない。何か異常な力が働いているようだった。


「行こう。」


カイルの声が、智紀を現実に引き戻した。カイルは一歩前に踏み出し、智紀もその後に続く。村の奥へと進む二人の足取りは、静けさの中で異様に響く。


「来る。」


カイルの言葉は、智紀の胸に鋭く響いた。その声に力がこもり、智紀は不安がますます強くなるのを感じた。


「何が来るんだ?」


「時間がない。今すぐ準備をしなければ、手遅れになる。」


カイルは強い口調で言い、再び前を向いて歩き始めた。その言葉に、智紀は何も言えずにその後を追った。これから何が起きるのか、想像すらできないまま、ただ不安な時の流れに身を任せるしかなかった。


―――――――――――――――


ご覧いただきありがとうございます。智紀とカイルの物語がどんどん深まっていき、緊張感が増していますね。これからの展開もお楽しみいただけるよう、頑張って書いていきますので、今後も応援よろしくお願いします!

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