第18話
「やっほー、和茶ちゃん♪」
軽やかな声色で、巨大な鎌を引っさげている少女。
彼女は私と同じ神で、名を、本庄海石榴(ほんじょうつばき)という。
与えられた神号は、八坂刀売神(やさかとめのかみ)。
その神格は、水神、農業神、温泉の神、国造りの神と呼ばれている。
『神格』とは、神の格式のことであり、神号に基づく神の持つ「特性」や「能力」であると言っていい。
その神格の通り、ツバキは「水」をモチーフとした神力を扱う神だった。
鎌が青みがかっているのはそのためだ。
街へと向かっている道中の私を見つけ、話しかけてきた。
「どこ行くの?」
「見てわかるだろう。“仕事”だ」
「えー、出没したって連絡は来てないけど」
「この前もそうだったんだ。どうも、霊力を自在に操れるやつでな」
ツバキは不思議がっていた。
彼女は私と同じ地区に所属している。
第5地区の担当者は合計で4人いるが、ツバキはそのうちの1人だった。
「自在に操れるって??」
「報告書に書いていなかったか?さてはお前、“大社”に帰っていないな?祥太郎に全て任せているのだろう?」
「あはは。バレた?帰ったってすることないし」
「責任者のお前が行かないでどうする。そのうち突っ込まれるぞ?」
「訓練生の教育で忙しいの。和茶ちゃんだって、いつまで1人でやってるわけ?」
「私は1人でできるから大丈夫だ。書記官など必要ない」
ツバキは少々めんどくさがりの部分がある神だった。
やる時はやるんだが、普段がな…
「大社」というのは、各地区の中央に鎮座している大きな神社のことだ。
地区の中に存在している神社を統括する場所であり、私たちの「事務所」でもある。
神になったからには仕事をしなければならず、担当している業務をそれぞれこなしていかなければならない。
一週間に一度は報告書を出す必要があり、管轄内の汚染度の調査報告書、及び週や月ごとの業績や労務状況などをまとめた書類を提出せねばならない。
報告書の記入や、日々の業務内容・進捗状況などのデータ管理を担っているマネージャーが存在し、その職についている者たちのことを「書記官」と呼んでいる。
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