第11話 秋吉小町との初仕事 2
小町と雑談した後、羽柴さんに呼ばれた俺たちは最終打ち合わせを行う。
今回の収録内容は前半にオープニングトークを含めて10分。そして1曲挟み、8分程度のトークを行う。最後に1曲流してエンディングトークへと移る流れだ。
「このラジオ番組はメインパーソナリティを努める小町ちゃんが司会進行を行い、ゲストと楽しく話すラジオ番組だ。基本的に小町ちゃんから聞かれたことに対して話すだけで問題ない。時間調整は小町ちゃんの方でお願いするから」
「分かりました」
羽柴さんと小町の間で様々な打ち合わせを行っていたようで、俺のやることは小町に聞かれたことを正直に話すだけの収録だ。
「じゃあ始めようか」
とのことで俺たちは収録部屋へ移動する。
「先輩、緊張してますか?」
「そうだな。実は結構緊張してる。緊張してないよう振る舞ったつもりだったんだがな」
「初めての収録で緊張しない人なんていません。ウチがサポートしますのでリラックスしてくださいね!」
可愛い笑顔とともに頼もしい言葉をもらう。
その笑顔と言葉を聞き、幾分か緊張がほぐれる。
「ありがとう、小町。ほんと初仕事が小町で良かったよ」
「わーっ!ありがとうございます!」
本心から思ったことを伝えるとパーっと笑顔になる。
(やっぱり小町の笑顔は元気付けられるな)
そんなことを思いつつ、収録開始の合図を待った。
収録が始まる。
『さぁ始まりました!小町ラジオ!本日もよろしくお願いしまーす!』
メインパーソナリティを務める小町が番組紹介とともに挨拶をする。
『今日のゲストはなんと!今話題のイケメンモデル、クロさんに来ていただきました!』
『よろしくお願いします!』
小町とのやり取りのおかげで思いの外緊張しておらず、噛むことなく挨拶をする。
『やっぱり近くで見るとめっちゃカッコいいですね!ウチ、クロさんが表紙を飾った
『す、数千倍は言い過ぎだろうが……ありがとうございます』
小町からストレートに褒められ、照れながら返答する。
『ではまずはクロさんに自己紹介をしてもらいましょう!』
『あ、はい!』
とのことで簡単に自己紹介を行う。
その際、俺たちが幼馴染で同じ大学に通う先輩後輩であることも話す。
『リスナーさん達はビックリするかもしれませんが、ウチとクロ先輩って実は幼馴染なんです!』
『といっても今では会った時に少し話すくらいの関係だけどな』
そう切り出して俺たちは話題を広げていく。
羽柴さんには幼馴染であることを伝えており自由に話していいと言われているため、遠慮なく昔話をしていく。
小町が引っ越すまでは毎日のように遊んでいたこと。
小町が俺と同じ大学に通うこととなり、数年ぶりに再会したこと。
今では大学内で話をする程度の関係であることを話す。
『小町が引っ越す前は声優を目指してなかったから、俺たちは毎日のように遊んだな』
『ですね。ウチが声優を本格的に目指したのは引っ越してからですから』
そんな会話をしながら過去のエピソードを話す。
そしてキリのいいところで前半のトークを終え、一曲流す。
その間、俺たちは後半のトーク内容を話し合う。
「後半は先輩への質問コーナーになります。事前に質問内容はお伝えしてると思うので準備だけしててください。時間配分はウチがやりますので」
「分かった」
事前に質問内容は把握しており、手元には返答内容まで記載済み。
俺は曲が終わるまで目を通しながら羽柴さんの声がかかるのを待つ。
そして曲が終わり、収録が再開する。
『とても良い曲でしたね!』
『そうだな。俺も元気をもらいたい時によく聴いてるよ』
そんなありきたりな感想を述べ、質問コーナーへ入る。
『では全リスナーが楽しみにしているであろう、クロ先輩への質問コーナーです!』
“パチパチっ!”と小町が手を叩いて盛り上げる。
『ではさっそく移ります!まずは秋田県在住、『クロ様の犬』さんからのお便りです。これは秋田犬を意識した素晴らしい名前ですね!』
『これっぽっちも思わないが?』
という俺のツッコミを華麗に無視した小町が1枚のハガキを手に取る。
そして質問を読み上げる。
『クロ様の好きな女性のタイプを教えてください!』
『そうですね。俺は優しくて笑顔が素敵な女性がタイプです。あとは家庭的なところですね。身体的特徴にこだわりはありませんね』
その言葉に小町がパーっと笑顔になる。
『クロ先輩は胸の大きさで女性を選んだりしないって信じてました!』
小町の胸はまな板レベルなので俺の言葉は救いだったようだ。
『俺は気にならないが、一般的な男性の意見じゃないから今の言葉で喜ばない方がいいぞ。将来、小町が好きになった男の趣味嗜好は分からないからな』
『大丈夫です!クロ先輩の言葉は全男性の意見ですから!』
『全男性を代表して発言できるほど俺は生きてないから!』
20年しか生きてない俺の意見を参考にしない方がいいと思う。
しかし俺の言葉に満足した小町は次のハガキを手に取る。
そんな感じで俺は質問に答えていった。
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