第5話・ミオの初ファイト
・グマンの国西区 チームアーサークラウン占領地エリア2・大型ライブ会場内
チームアーサークラウン、トリスタン卿ことジータ・タンドリーのライブも最終公演を迎えた。ジータは最後のパフォーマンスを終えて、2本の回復薬を飲み干すと再びマイクを手に取り会場内の観客に話しかける。
ジータ「今日はアーサークラウンはトリスタンのライブに参加してくれてありがとう。最後の最後に本日のメインディッシュ、ファイトをやろうと思う」
観客は騒然とする。ジータのライブでは乱入さえなければ最初の公演の内にファイトを始めるからだ。故に最終公演まで残るファンは乗り遅れたか、ミュージックを楽しむのを主とするファンが多いのだ。しかし、ファンはファンだ。アイドルのサプライズに喜ばないわけがなかった。
観客「トリスタン!」「トリスタン!」
ジータ「さぁ出てきなよ、グランドアースのファイター!」
観客「おぉー!グレンダ!」「グレンダ!」……
観客はグランドアースの名前だけでグレンダコールを発する。
しかし、ステージに現れたのは……
観客「誰だ?」
ミオの登場に会場が先ほどまでの盛り上がりから一転して静まり返る。
ミオ(やっぱり、皆グレンダさんを望んでいるんだ。でもダメだ。今日は、今日からは私たちがグレンダさんの代わりにファイトするんだ!グランドアースのメンバーとして)
観客「あの子知ってる。グランドアースのメンバーだよ」
観客「グランドアースはグレンダだけがセンターで歌うから実質他メンバーはバックダンサーな所あるからな」
観客の中でグランドアースの噂が飛び交い、その内のいくつかがミオの耳にも入る。
ジータ「さて、トップアイドルの代わりに来たあなたには色々聞きたいんだけど……」
ジータはミオにマイクを渡す。
ジータ「教えてくれないかな?」
ミオ「……っ!はっ、あい!」
ミオは緊張して声が上手く出せなかった。
ジータ「……大丈夫?」
ミオ「えっ、いやはい。大丈夫です」
ジータ「じゃあ改めて、あなたがトップアイドルの代わりに来た事を教えてほしいんだけど」
ミオ「それは、グレンダさんはもうファイトをしないからです」
ジータ「何故?」
ミオ「それは……教えられません」
ジータ「わかった、昨日の負けが尾を引いてるんでしょ?」
ミオ「それは違います!」
ミオの何かを必死に隠す言動にジータを眉を顰める。
ジータ(グレンダにファイトが出来ない理由が出来たってことしかわからないけど……まぁいいか)
ジータはブレスを取り出す。
ジータ「ファイトの用意は出来てるんでしょ?」
ミオ「……はい」
ミオもブレスを取りだす。見る人が見ればわかる、それはグレンダのブレスである。
フェイ「アイヤー!!」
会場のどこかからレフェリーであるフェイがステージに降りてくる。
フェイ「それでは両者とも、合意と見てよいかー!?」
二人は頷く。
フェイ「それでは両者ドレスアップネ。術式開始、対魔防壁展開ッ!」
フェイは右手に魔法陣を展開する。その魔方陣は会場を包み込むように広がり、やがて見えなくなる。これは周囲にファイトによる被害が及ばないようにする結界、バリアだ。そしてステージにいるアイドルはそれぞれのブレスにコアマテリアを装填しドレスアップする。
ジータ「なるほどね」
ジータはミオの姿を見て何かを感じた。ミオのドレスはまるっきりグレンダと同じなのだ。
ジータ「パーシヴァルのいる私らには、あんたのやろうとしている事がわかる。
ミオ「……その通りです。私達グランドアースのメンバーが何とかして作った、グレンダトレース」
ミオ(その初めての実戦……)
ジータは身震いする。
ジータ(面白い事考えるじゃない。自分が戦えなくなった時の為?メンバーに自分を模倣させるなんてさ……それでこそ……)
ジータ「私の魔法を試す価値がありそう」
ジータは思わずニヤリと笑う。
フェイ「それではよいか?」
ジータ「ええ」
ミオ「はい!」
フェイ「それじゃあ始めるネ!アイドルファイト~」
観客「ラァァイブッ!!」
ジータ&ミオ「「ゴー!!」」
開始早々、ミオのハンドガンによる激しい銃撃がジータを襲うも、ジータは槍を回転させてそれを全て弾く。
ジータ「まだまだぁ」
ミオ(だったら……)
ミオは加速してジータの背後へと回るも、予測していたかの様にジータの槍撃がミオに迫る。ミオは反り返ってその攻撃を回避する。
ジータ(なるほど、反応速度もグレンダ並みってわけね)
ジータの薙ぎ払いからの連続突きをミオは躱し続ける。
ジータ「躱してばっかじゃあ!」
ミオはジータの攻撃の細かな隙をついて銃撃を放つ。その銃弾はジータの腹部のドレスを引き裂く。
ジータ「……やるじゃん」
ミオは得意げにほほ笑む。
ジータ「隙あり!クルーエルフラッシュ!!」
ジータの閃光の様な槍術がミオの上半身へと迫る。しかしミオは閃光よりも早く加速しそれを躱す。ジータの槍はステージの外へと飛んで行ってしまう。
ジータ「だと思った!!」
ミオ「ッ!?」
ジータの膝蹴りがミオに直撃する。倒れ込むミオ。
ジータ「成功!私の魔法。
ミオは起き上がる。
ミオ「マグネット?」
ジータ「ま、これから何が起こるか実際に教えてあげましょう」
ジータは魔術を使って遠くにいった槍を手元に持ってくる。
ジータ「この槍、今からあんたに向かって投げるわ」
ミオは身構える。
ジータ「無駄だと思うけど……な!」
ジータはミオめがけて槍を投げるミオは躱そうとするが、槍はミオを追従しついてくる。
ミオ(避けられない!?)
ミオは会場内を高速で移動するも槍はしつこく彼女を追い続ける。
ミオ(撃ち落とせば!)
弾幕を張って槍を落とそうとするも、槍はミオを追い続ける。
観客「後ろー!」
ミオはその言葉を聞いて後ろを振り返る。そこには蹴りの体勢のままミオに迫るジータがいた。
ジータ「前門の虎、後門の狼ってね」
ジータの蹴りと槍がミオを挟撃する。ミオの腹部のドレスが砕け散る。
ジータ「これが必殺のクルーエルギロチン」
ジータはステージへと着地、ミオは観客の真上のバリアに落下した。
ミオ「……まだだ、まだ終わってない」
ミオはハンドガンを手放し、大型のガトリング砲を召喚する。
ジータ「へぇ、グレンダの真似でそれ取り出すって事は……」
ミオ「必殺魔術、レールガンアサルト」
ミオはガトリングをジータに向ける。
ミオ「私の魔力を全部出し尽くしてでも!シュート!!」
ガトリングから無数の弾丸が光速でジータに迫る。弾丸はジータを貫通してステージに直撃していく。
フェイ「アイヤー、対魔防壁をこっちに集中させるね」
ガトリングの銃身が赤く焼けるまでミオは撃ち続ける。ミオのブレスから魔力切れの警告音が鳴ると同時にミオは撃つのをやめる。銃弾が無数に撃たれた先には誰もいない。
ミオ「やった……勝った……」
ミオが喜び、ガトリング砲を手放した瞬間だった。
ジータ「負けだよ」
ミオの頭上から声がした。それがミオが気を失う前に聞いた最後の言葉であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます