ヘタレ、冒険者になるってよ
クククランダ
第1話 ヘタレ、帝都に行く
俺の名前はマルク・ルーヴェルト。ただのしがない引きこもりだ。なぜ俺が引きこもりなのかって? それは外には危険がいっぱいだからだ。
俺は少し前に村の外に出た。すると何が起きたか。はい、普通に魔物に襲われました。すごい怖い見た目の魔物に襲われて全力で逃げた。それからは実家でずっと引きこもりだ。
我ながら情けないが死ぬよりはマシなのでこのままで良いと思いながら生活していた。けど、現実はそんなに甘くなかった。少し前に俺は親に家を追い出された。
「自立できるようなったら帰ってきても良い」とのことだ。と言うわけで今、俺がいるところは自分の村ではない。馬車に乗って絶賛移動中である。ちなみに移動中は魔物に会わないようにずっと祈ってました。
「ほら、お客さん見えたぜ」
「すっげー。でかいなぁ」
着いた場所は自分の村とは比較することすら大きかった。帝都『コルディアス』この辺りでは1番巨大な街だ。俺は馬車から降りて乗せてくれたおじさんに金を渡して、帝都の門をくぐった。
「おー、人が多い。これが帝都かぁ」
俺の村とは全然違う。まず人口がすごい、どこを見ても人がいる。次に屋台や店なんかも数えきれないくらいある。食べ物、道具、果ては武器まで様々な物が売っている。
「それよりどうしたら良いんだ? 金は渡されてるけど、流石にずっとは生活できないし」
親から渡されたのは金貨20枚、良くて2、3ヶ月くらいしか生活出来ない。やっぱ仕事を探さないと駄目だよな。しかし、何の仕事をしようか? 危ない仕事は論外だとして、たとえば花屋とか? それかパン屋とかどうだろうか? なんかこう、危険な人とか来なさそうなイメージだし。
「……あれ? ここどこだ?」
俺は周りを見渡す。いつの間にか細くて薄暗い場所に居た。どうやら考え事をしていたらどこかの路地裏にきてしまったみたいだ。
「へへ、お前。よそ者だろ」
「え……?」
俺が路地裏を出ようとすると2人の男が道を塞ぐように現れた。
「おい、あんた。金よこしな。そうすりゃ無事に解放してやるよ」
「………」
「おい。聞いてんのかよ。……ッチ。こっちの方が手っ取り早いか」
男は不機嫌そうな顔のまま懐からナイフを取り出した。出口の方から射す光がナイフを一瞬照らした。俺はそれを見た瞬間ーー
「あ、あばばばばばば」
変な声を出して震えてしまう。どうしよう、俺はあれでめった刺しにされるのか!? まだまだやり残したこととかあるのにどうすれば!
「君ら、何してるの?」
「あ?……っ!! やべぇ、逃げるぞ!!」
男達の後ろから女性の声がする。男たちは後ろの女性を見るなり顔色を変えて逃げていった。これは、助かった……のか?
「まったく。あー言った奴らはいつまで経っても減らないな」
その人物はやれやれと言わんばかりの表情をしていた。しばらくすると、ため息をつき、俺へ視線を移して手を差し伸べてくれる。
「ほら、大丈夫?」
「あ、どうも。ありがとうございます」
「君も気をつけなよ。こういうところはさっきみたいな人……が……」
「?? あの……」
なぜか急に固まってしまった。しかも俺を見て呆然としている。なんで? 怖いんだけど。
「君、名前は?」
「え、マルクですけど」
「!! やっぱりそうだ!! いやー、久しぶりだね!!」
俺は急に肩をばしばしと叩かれる。あの、痛いんですけど。てか、久しぶりってなんだ? 俺にこんな美少女の知り合いはいなかったはずだけど。
「あれ、さてはその顔は忘れてるね。ほら、私だよ。フェリスだよ」
「フェリス………あー! お前フェリスか!」
そうだ! よく見たら確かにフェリスだ。この男勝りな性格も、特徴的な赤髪も何一つ変わっていない。
「やっと思い出したー! それにしてもマルクはデカくなったね!」
「そうなんだよ。たぶんだけど父さんの遺伝だな」
俺の身長は同年代の男たちと比べても高い方だ。父さんが高いから俺も自然と高くなったんだと思う。だ だが、身長は高くても絡まれることが多い。身長が高いと威圧感があって絡まれにくいなんて物は嘘だと俺は思う。
「でも、あれだね! さっきみたいな情けないところは昔と一緒!!」
「………」
フェリスはニコニコと言ってのける。たぶん、悪気はないのだと思う。けど悪気がないからこそ、より深く俺の心にダメージが来る。
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