第12話


ホストかぁ。



何となく納得。



確かにこいつが自負するだけの美貌を兼ね備えている。



でも……



変!すっげぇ変なヤツ!!



男と寝てしまったというショックと後悔はあるが、それはそれで忘れることにしよう。



とりあえず、一刻も早くこんな変態野郎と離れるべきだ。



「聞きたいことはそれだけか?ちなみに身長は185cm、64kg。うお座のB型♪30歳♪だ」



聞いてもいないのに、男はぺらぺら喋る。



それを軽く聞き流しならも俺はずきずきと痛む腰を宥め、何とか服を着ると慌しくベッドを立ち上がった。



「泊めてくれてありがとう。とりあえず礼だけは言っておく」



「何だよ急に素直になって」



と男はにやりと笑った。そしてタバコの火を灰皿にもみ消すとおもむろに俺を覗き込んできた。



「あんたと一刻もおさらばしたいからな」



「あんたじゃなくて周」男は面白くなさそうに唇を尖らせたが、俺は男を押し戻して上着を肩にひっかけた。



「もう会うことはねぇよな。あばよ」



そう言って立ち去ろうとしたとき、男は俺の腕を強く引っ張った。



突然のことと、思いのほか力強い腕に俺はあっけなく男の胸元に逆戻り。



男の纏う爽やかな柑橘系の香りが……心地よく鼻腔を刺激して、俺は昨夜の出来事を不覚にもちょっと思い出してしまった。



男の唇。体温―――香り………



昨夜のできごとが急に生々しく俺の頭を過ぎり、俺は慌てて頭を振った。



そんな俺に―――






「忘れ物だ。ヒロ」







耳元で低く囁かれて、頬にちゅっと口付けを落とされ俺は目を開いた。



「な、何すんだ!この変態!!」俺は慌てて押し戻すと、男は降参というポーズで腕を軽く上げた。



「何って、“いってらっしゃい”のチューだ。ついでに言うが“あばよ”じゃなくて、“またな”だぜ?」



男は憎らしいほど爽やかな笑みを浮かべて、軽く手を振った。





な―――…何なんだ!!




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