死神アルバイト

新米編

第1話 進学

　「死神」それは、人の死に際に現れ、魂を刈り取る者達のことを言う

　「死神」はとある方法でなれる……それは、「アルバイト」である

　「アルバイト」になるにはどうしたらいいのか、それは、「一度死後の世界」に行くことである

　「死後の世界」に行く、つまり、「一度死ぬ」と言うことだ

　ザー

　雨が激しく降っている

　その中を私は、走る，走る、当てもなく、今何処にいるのか分からないけど、ただひたすら走る

　ゴロゴロ……

　どうやら近くに雷が落ちたようだ、それでも，走る

　私は誰？　何処からきた？　誰に育てられた？　何も思い出せない

　すると、光扉が……その扉に手を掛ける

「はぁ、はぁ、またこの夢」

　最近街で走り回って、光る扉に入るという夢を見る……一体なんなんだあの夢は……

　でも、最初にあの夢を見た時、なぜか既視感があった

　なんでかは分からない、でも、これだけは分かる、私が走り回っている街は、私が住む、町、集魂（しゅうこん）町であるということだ

「琳寧（りんね）！　起きてるなら早く降りてきて！」

　そう、私の名前は今際（いまわ）　琳寧（りんね）という

　集魂（しゅうこん）町の外にある高校に通っている1年生だ

　今日から高校生活が始まるのだ！

　そんなことはどうでもいい、話に戻して、私自身はこの名前を少し洒落た名前だと思っている

　いや、十分洒落ている

　名前が洒落ているからか、ついつい身だしなみも洒落ていないと気が済まない

　ていうか、早く行かなきゃ怒られる

「はーい、ちょっと待ってて！」

　だだだ

　急いで階段を下った

「ちょっと！　朝から騒がしくないでよ！」

「しょうがないでしょ！　急いで来たんだから！」

　最近反抗期で母とはギクシャクした関係になっている

「何よ，その言い方！　せっかく起こしてあげたのに！」

「別に頼んでないし！」

「起こさなかったら、学校に遅れるでしょうが！」

「別に自分で起きれます！」

　いつもこうである

　喧嘩をしながら朝を迎える

「そうは言っても、結局起きれてないじゃない！」

「それはそっちが早く起こしにくるからでしょ！」

「そんなこと話しているうちに時間が来ちゃうわよ！」

　ヤバい、入学式に遅れる！

「じゃ、行ってきます！」

「気をつけなさいよ！」

　喧嘩をしても学校に行く時には仲直りしている

　これは中学生の時から続いている恒例行事である

　私は学校へは一人で歩いて行く

　正確には、途中で電車で一駅行ってから歩いて行くとと言う感じだ

　なぜ、たかだか一駅ごときで電車に乗るのかって？　答えは簡単だ入学前に歩いて行こうとした時、とても疲れたからである

　ずっと歩くより、少しの間だけでも座るか、立ち止まっていられるから良い休憩になる

　電車に乗りながら、流れて行く外の景色を見る

　田、田、田、家、田……と同じ景色ばかりである

　正直つまらないが、たった一駅なので、スマホを見ている暇もない

　そーんなことを思っている内に学校に着いてしまった

「さてさて、早速クラス分け表を見に行きますか」

　こうして、私も高校生生活が始まった

　やっと入学式が終わった……長い長い校長先生の話や、新しい担任の話、同級生（クラスメイト）の自己紹介、そして、重い教科書達、疲労困憊である

　この大荷物の中、歩いて帰っていたら死んでいた、いや、今の十分死んでいる

　もうすぐ駅だ、電車で一休みしよう

　やっとの思いで駅に着いたは良いものの、電車が車でまだ10分もある！

　田舎の駅だから1日の本数も少ないし、朝は間に合うように出たから良いけど、帰りの時間は盲点だった

　これは荷物が重いせいだ……まぁ、仕方ない

　今日持って帰らなければ明日の準備ができないからね

“間も無く、一番線に電車が参ります　黄色い線の内側でお待ちください”

　やっと電車が来た

　休憩タイムだ

「ふー、やっと一休みできる……これはこまめに教科書を持って帰った方がいいな……」

　私は中学生時代毎日学校に教科書やノート、ワークを置いて行っていた

　いわゆる「置き勉」と言うやつだ

　あーなんか疲れてるのかすごく眠たくなってきた……もうすぐ家だし、帰ったら思う存分寝よう

“間も無く、集魂、集魂　お出口は左です”

　よし、ようやく着いた

　後は行きと同じ道を辿るだけである

「母さん、ただいま〜」

「どうだった？　高校は？」

「とりあえず、クセの強そうな人が多かったね……」

　時間はクラス分け表を見に行った時に遡る

　辺りは人で埋め尽くされており、中々前に進めない

　クラス分け表らしきものを見つけても、人で遮られて全く見えない

　おまけに、周りはがやがや騒がしい

　鼓膜が破れれそう

「あー、あったあった　えーと、クラスは……って、少なくない？」

　その表には人数に見合わないたった5クラスしかなかった

「えー新入生のみーなさーん、ご注目！」

　突然、放送が始まった

「みなさん、クラス分け、見てみてどうでした？　人数足りてない！　って思いましたよね？　これからそれについて説明があるので、とりあえず体育館に来てもらいます」

　この放送を聞き、言われるがまま体育館に向かった

「新入生のみなさん、どうぞ席にお座りください」

　体育館に待っていたのは、この学校の校長……獄羅三途（ごくらさんず）だった

「ここにいる皆さんに、今年度から始まる、新しい制度についてお話ししましょう」