第110話 空腹 ホットケーキ
「おお!お魚だ!えーっと…水の民よ、我にもっとその顔を見せよ!!」
水族館に来た僕たち、もうただのはしゃぐ子供になったエリザ…
「なぁエリザってなんでそんな無理して吸血鬼ごっこしてんの?」
「ごっこ違う!!訂正されたし!我吸血鬼だし!高貴な方だし!」
普通に喋った方がまだ高貴だよなぁ、今はなんというかマイナスだ。逆の方に行ってるよね。
「まあ良いけど…水族館楽しい?」
「べ、別に?でもミミとクゥが楽しいってはしゃぐから…」
ミミとクゥはUFOキャッチャーで取ったウサギとクマのぬいぐるみだ。本人曰く血の色に似ているのが気に入っているらしい。白と青だが。
「向こうにイルカショーがあるんだけど行ってみる?」
「ショー!?我の為のか!い、良いだろう…物見遊山だ」
疲れる生き方してんなぁ…
そしてパワーアップしたイルカ達のショーを見てまた子供のようにはしゃぐなんだっけ…赤き月よりなんちゃらした人。
「わぁ!ショウ見て見て!こっちに手振ってる!!我に手を!」
「もう友達だな、エサあげてみなよ、喜ぶよ?」
そう言って魚の入ったバケツを渡した。
「我があげていいの!?おっと…ま、まあこれも一興だろう…心ゆくまで味わうがいい…くっくっく」
くっくっくの顔じゃないよ、キラキラした笑顔でクックックはもうギャグよ。
イルカ達にお腹いっぱいまでエサをあげて満足気なエリザ。遊んだらお腹が空いたと言い出した。
「空腹だ…血を寄越せ、高貴なる我に血を献上できるのだ…至高の時間と知れ」
「え?嫌です」
「な、別に血を寄越せなんて言ってないし!ご飯用意されたし!!」
「血寄越せって言ってたじゃん、吸血鬼って血を飲んで生きるんでしょ?嫌だよ痛そうだし。何より僕の身体にその牙通らないよ」
「じゃあお菓子でも可だ、献上されたし」
「お菓子をねだる言い方じゃないなぁ…」
そう言うと少し反省したらしく…
「ごめんね…あの…お菓子ほしい…甘いの食べたい…」
こんなん言われたらお菓子無限にあげちゃうよね。
「と、いう事で!ホットケーキを作ります!」
僕は台所に立ち声高らかに宣言する。
「ケーキ作るの!?我ケーキ作った事ない!教えておくれやす!!」
教えてあげやすとも。子供と作るならホットケーキ、簡単で美味しい…はず?
僕は正直そこまで美味しい物だとは思ってないけど今回は好き放題トッピングできる。
なんとかなる!
「まあ混ぜて焼くだけなんだけどね、この粉に牛乳と卵入れて混ぜてみて」
「け、ケーキとは簡単なのだな…良かろう、我に任せよ」
慣れない手つきで一生懸命に生地を作っていくエリザ、良いぞ!頑張って美味しいの作ろうな!
「後はこうやって焼くだけだ。表面に気泡が出てきたら裏返す。こんな感じだな」
「なるほど…やってみる…」
少し大きめにはなったがなんとか丸を保っている、もうそろそろか?
「そろそろ良いと思われる…血の眷属もそう言っている」
誰だよそいつ…ホットケーキ知らねぇヤツじゃないの?
とりゃーと勢いよくひっくり返したが思ったより上手くできた。少し形は崩れたがまあ許容範囲だな。
「で、できたー!!ねぇ!見た!?すごかったねぇ!」
「上手いじゃないか、じゃあ焼けたらお皿に置いて…お楽しみはここからだ」
皿に乗っかったホットケーキ、その横には生クリーム!カスタードクリーム!多種多様な果物!チョコチップ!果物ソース!あとはあの細かい色んな色したヤツ!
「好きなの使ってオリジナルケーキ作りなよ。きっと美味しいのできるよ」
「おわ!自分のケーキ!?やる!美味しいのできたら一緒に食べようね!!」
わぁ!可愛い!娘にならんか君!
それから二人でオリジナルのホットケーキを作った。
エリザはトッピングを味見しながら相性を考え盛り付けている。
途中で二段にすると言い出し追加で焼いたホットケーキを上に乗せてまたどんどんトッピング。
そして出来上がったのが…
見た目なんてクソ喰らえのカロリー爆弾だった。
僕はバターとアホみたいな量の生クリームだけのシンプルなものにした。
エリザはクリームがふんだんに使われて所々にチョコや果物、ベリーソースでウサギとクマが描いてあるホットケーキ。いやこれは絶対に美味しい。
「我がジュース持ってきてあげる!」
そう言ってミルクティーを二つ持ってくる吸血鬼、もうそろそろ厨二病パターンもネタ切れか。
そして二人並んでホットケーキを食べると…美味い…やはりホットケーキはバカな盛り付けの方が美味い…
「我が作ったケーキ美味しい!筆舌に尽くしがたし!ショウにも少しあげる!!」
そう言って一切れ貰ったが確かに美味い…暴力的な美味さだ。
「エリザの美味しいね、ケーキ作り楽しかった?」
「楽しい!!これ食べたらもっと遊ぶ!こんなに楽しいの久しぶり!」
「エリザって何歳なの?」
「ずっと生きてる!何歳かなんて覚えてる吸血鬼はいまい!」
いまい!とか言われても知らないんだけど。
「吸血鬼って歳取らないの?なんかもう子供にしか見えないんだけど」
「我が?あぁ…こっちの方が消耗が軽いから…大きくもなれる」
そう言うとどんどん背が伸び、とびきりの美少女の姿になった…何を見せられてるんだ僕は…。
「可愛い?こっちの方が好き?」
いやそのガーターベルト反則だろう!どうしても足に目が…
「我の足がそんなに良いか?ほ、ほれ、もっと近くでみても…その…良いんだけど…」
最初からこっちの姿だったらなぁ!最初がアレだとなんか僕犯罪者みたくなっちゃう!
「いや…戻った方がいいかも…僕には刺激が強いみたいだ…」
「ふ、ふーん、そうなんだ、まあ少し疲れるから我戻ろうかな…また見たくなったら言えばいいかも…」
どのタイミングで言えば僕捕まらないかな?
小さい姿に戻ったエリザと何して遊ぼうか考えたが…エリザを見ているとなにか懐かしいような…
そんな遊びをしたくなった。
「ちょっと待ってね」
僕はステータスを開き公園をアクティベート、なんとなく素朴な感じの遊びをしてみたくなったんだ。
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