第6話 深める絆
ヴィクトリアは、ハーウッド家の侯爵子息エドワードとの婚約が決まった。元々は彼女が持つ社交界やパーティー主催に関する知識や経験、アイデアを求めての申し出だった。彼女が婚約を破棄されたという情報を入手すると、いち早く婚約の話を持ち込んだ。
それだけ、ハーウッド家は社交界やパーティーの知識と経験がある者を強く求めていた。
でも、実際に会ってみたエドワードは、ヴィクトリアに対して一目惚れに近い感情を抱いた。彼女と一緒にいると心地よく、共に人生を歩みたいと思うようになっていた。
そんな彼の真摯な気持ちを受け止めたヴィクトリアも、前向きな気持ちで婚約を受け入れた。まだお互いのことを深く知らないが、これから一緒に過ごす中で理解を深めていけばいい。
エドワードとの相性の良さや、彼女も一緒にいて心地よい雰囲気を感じており、彼との婚約生活に希望を抱いていた。
婚約が成立してから、エドワードは定期的にヴィクトリアを屋敷に招いて会話を楽しむ時間を設けた。そこで二人は互いのことを少しずつ知り、仲を深めていった。
近況報告をしたり、婚約発表の適切な時期について話し合ったり。将来の夫婦生活への期待や希望も語り合った。
「俺は、君と一緒に暮らせる日が待ち遠しいよ」
「私も、あなたと一つ屋根の下で過ごせる日を心待ちにしています」
そっと手を重ね合い、温かな眼差しを交わす二人。彼らを周りで見ている執事や侍女たちも、良好な関係を築いている二人を見て微笑ましい気持ちになった。このまま順調に行って、良い夫婦関係になることを願った。そうなれば、ハーウッド家も安泰だろうから。
そして5回目のお茶会で、エドワードはヴィクトリアにとある相談を持ちかけた。
「実は、君に頼みたいことがあるんだ」
「なんでしょうか?」
「ハーウッド家主催のパーティーについて、君の意見を聞かせてほしいんだ」
エドワードはヴィクトリアに、自身が作成したパーティーの計画書を見せた。本来は関係者以外に見せてはいけない内容だが、ヴィクトリアなら問題ないと判断したのだ。
「これは、私が見ても大丈夫でしょうか?」
念の為、ヴィクトリアは確認する。自分が見てもいい内容なのか。重要な情報なら見ないように気をつけるべきじゃないのか。
「もちろん。君は、俺の婚約者だから」
エドワードは優しく微笑みながら、許可を出した。もうハーウッド家の一員として信用しているから、見ても大丈夫だと。
許可を得たヴィクトリアは、丁寧に計画書に目を通していく。今回のパーティーの全体指揮を任されているエドワードは、社交界の寵児として知られるヴィクトリアの評価に興味津々だった。
果たして、自分の企画力は彼女の目にどう映るだろうか。内心では強い緊張を覚えながら、冷静を装ってヴィクトリアの反応を待つ。
しばらくすると、最後まで読み終えたヴィクトリアがエドワードを真っ直ぐに見つめた。とても真剣な目つきだ。
「正直に言っていいですか?」
「あ、ああ。もちろん」
思わず声が上ずるエドワード。
「これでは、難しいと思われます」
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