第13話:ヘーゼルナッツ。

優希君のマンションへ招待してもらったシェリー。

優希君との時間は、シェリーに悩みを忘れさせてくれるくらい楽しい時間だった。


もちろん部屋にはふたりきりだったけど、紳士的な優希君はシェリーに、

やらしい行為に及ぶことはなかった。


シェリーはどこかで、そういう流れになりはしないかと思っていたが

もし、そんなことになったら・・・それはそれで覚悟はできていた。


って言うか人間とは違うニンフ。

セックスはライフワークみたいなもの。

ただシェリーは人間と関係はまだ持ったことがなかっただけ。


シェリーに悩み事がなければ、もっと気持ちが優希君に傾いたかもしれない。


いやいやそんな悩みがなかったら、シェリーはとっくに優希くんとセックス

してたかもしれない。

恋愛とはまた別にして・・・愛がないと、なんて考えは人間だけ。

ニンフにそれは通用しない。。


定期的にセックスしないといけないのがニンフだから。


いくらシェリーが優希君のことを、まだ好きって感情にならなくても

優希君から「片想いは嫌だなって」言われて少し胸がキュンってなった。


「僕は片想いのまま、君に思ってもらえるまでずっと待ってるのかな?」


そんなこと言われたら・・・シェリーは優希君を思い切り抱きしめたかった。

そんなに自分のことを思ってくれてるのに応えてあげられないって・・・

寂しくて悲しかった。


(こんな気持ち・・・私・・・もしかして優希に恋してる?)


シェリーは自分で気づかないうちに優希のこと好きになっていたかも

しれなかった。

だから今抱えてる自分の問題を、早く片付けてしまいたかった。


そんな折、またまた例のゴミ箱から、やってきた人物がいた。

彼もベンジャミンと同じ山羊、牧羊神パーン・・・主にシェリーの世話係。


彼が来るのをゴミ箱の前でセバスチャンが待っていた。


「やあ、来たね、ヘーゼルナッツ」


セバスチャンにそう呼ばれた男は、なんか普通のサラリーマンの格好をしていた。

白いカッターシャツにグレーのネクタイ、紺の背広に・・・髪をぴちっと七三に

分けてメガネなんかかけて頭が良さそうで、なかなかのイケメンだった。


死人みたいなベンジャミンとは大違い・・・普通にどこかの商社マンみたいだった。

でもまあ、見かけで人を判断してはいけない。

あくまで人間に化けてるだけだから・・・。


だから本当の姿に戻ったらベンジャミンとどっこどっこいの姿なのだ。


「やあ、セバスチャン」


「ヘーゼルナッツ・・・あんたの言ったことは本当のことなんだな」


「そうだね・・・それでシェリーはこの世界に逃げてきたんだと思うよ」


「そうか・・・それはやっかいだな」


「早速、シェリーに確かめないと・・・」

「なんか優希ってやろうと、よろしくやってるみたいだけど」


「シェリーは場合によっては強制的に連れ戻されるかもな・・・」


とりあえずセバスチャンはヘーゼルナッツを連れて電車に乗って隼人君の

アパートまで帰った。


「ただいま・・・ワイン様・・・ただいま帰りました」


「あ、おかえりセバスチャン」


そう言ったワインは、セバスチャンの後ろにいる人物を見た。


ちょっと首をかしげたが・・・


「え?ヘーゼルナッツ?・・・あんたまで来たの?」


当然その男もワインとも馴染みだった。


「なに?シェリーを迎えに来たの?」


「まあ、そうですね・・・できれば帰ってもらったほうが平和に

解決できるんですが・・・なんせこれは個人の問題ですから・・・」


「向こうではちょっとした事件になってますからね」


「なにがあったの?シェリーはどんな問題かかえてるの?ヘーゼルナッツ」


「実はですね・・・ワインさん・・・シェリーはゼヌス様に見初められたんです」


「は?・・・何言ってるの?」

「ゼヌスって言った?」

「ゼヌスが?、シェリーを?」

「え〜〜〜〜うそだ〜・・・まじで?・・・なんでまた、そんな?」


「なんでもゼヌス様がたまたま狩りのため地上に降りてきていた時

宿を求めたのがシェリーさんの家だったんです」

「まあ、ロゼさんやワインさんちでもあるんですけどね」

「って言うか、ゼヌス様が来た時、私もそこにいましたから・・・」


「で、でまあ女性姉妹の家ですから、ロゼさんやワインさんの上にも

お姉さんはいたわけですけど・・・ゼヌス様ですからね、年増の姉たち

より若いシェリーさんがいいに決まってるんです」


ゼヌス様が来た時にはロゼさんもワインさんも、もうこの世界に来てました

から・・・若い子で年頃と言えばシェリーさんひとり・・・下の妹は子供で

幼すぎますからね・・・」


「で、ゼヌス様がぜひともシェリーさんを嫁にと・・・」

「タイプだったんじゃないですか?シェリーさんは、ゼヌス様の」


「当然シェリーさんはそれが嫌で、この世界に逃げて来たってわけでしょう」


「でもね、普通の結婚じゃないですからね・・・相手はゼヌス様ですよ」

「もし断ったら、どうなるか分かったもんじゃありません」

「あの方には誰も逆らえませんからね・・・」


「もし今回の話をチャラにできる人がいるとすれば、それはゼヌス様の

奥様ヘラ様だけでしょうね」

「ですからシェリーさんのお母様も困り果ててますよ」


「ってことなので、シェリーさんにはぜひとも帰っていただかないと」


「一番やっかいな問題ね、それって・・・」


妹のこと・・・他人事ではないだけにワインはため息をついた。


つづく。


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