【安心してください】学校一のおチビの僕が何故か学校一の美少女に溺愛される話【ただのショタコンです】
斜偲泳(ななしの えい)
第1話
小森翔太はチビである。
高校一年生にして、身長僅か140センチちょっと。
これは小学五年生男子の平均身長よりも低い。
当然学校で一番背の低い男子である。
中学生の時もそうだったし、小学生の時もそうだった。
列を作れば翔太はいつも一番前だ。
万年チビの冴えないチビ太である。
お陰で散々苦労した。
男子にはイジメられ、女子には馬鹿にされる。
怒っても怖くないのでイジメ放題のからかい放題だ。
必然、翔太は臆病で消極的な性格になった。
イジメられてもからかわれても、いつもヘラヘラ曖昧な作り笑いを浮かべている。
本人だって情けないと思っているが、怒ったら余計にイジメられる。
チビ太の癖に生意気だ! と。
だから翔太は思っていた。
チビで良い事なんて一つもない。
少なくとも、この時までは……。
†
「好きです小森君。私とお付き合いしてください」
呼び出されたのは夕日の射し込む空き教室。
真剣な表情で翔太を見下ろすのは、思わずグッと息を飲み、そのまま窒息しそうになる程の美少女だ。
腰まで伸びた艶やかな黒髪、眩しい程に白い肌、憂いを帯びた表情は儚げで、可愛いよりも綺麗が似合う大人びた容姿は、同い年にも関わらず成熟した女性の妖艶さを放っている。身体つきも大人顔負けで、ボンキュッボ~ン! のダイナマイトボディ。胸元には、全男子の視線をガッチリ掴んで離さない、大きく実った二つの果実……。
彼女の名は
翔太と同じ一年一組で、入学早々彼女にしたい女子ランキング一位に選ばれた大人気の女子である。
そんな子に告白されてしまったら、断る手などないはずなのだが。
「……ごめんなさい。許してください……」
ビクビクと、怯えるような上目遣いを向けながら、翔太は言った。
その意味を反芻するような間が数秒空き、薫子は尋ねた。
「ごめんなさいと振られるのならわかります。でも、許してくださいというのはどういう事なのでしょう。私はただ、小森君に告白しているだけなのですが」
薫子の問い掛けに、翔太の肩がビクリと揺れた。
俯いたまま、翔太は何も答えない。
お互いに黙ったまま、時間だけが過ぎていく。
薫子でなかったら、大声で答えを急かしている所だ。
けれど薫子は、怒った様子など全く見せず、辛抱強く答えを待っている。
目の前で怯える小学生のような少年の旋毛を、ただじっと、愛おしそうに見つめている。
まるで可愛らしい子猫か赤ちゃんでも見ているように、ウットリした様子で眺めている。
程なくして、翔太はポツリと呟いた。
「……だってこれ。嘘告……ですよね……」
オドオドしながら翔太が顔を上げる。
黒目がちのつぶらな瞳は、溢れんばかりの涙でキラキラと輝いていた。
「――ッ!」
薫子は声にならない悲鳴を飲み込み、大きく膨らんだ胸元を押さえた。
食いしばった白い歯の間から、フーッ、フーッと熱っぽい吐息が零れる。
それを見て、翔太は庇う様に頭を抱えた。
「ご、ごめんなさい! 怒らないで……」
怯える翔太を前にして、薫子の切れ長の目がジットリと熱を帯びる。
口元から上品さが剥がれ落ち、三日月型にニタリと笑うと。
飢えた獣が顔を覗かせ、長い舌が下唇をペロリと舐めた。
ハッとして、薫子はブンブンと首を振る。
次の瞬間には、思わず溢れた彼女の本性は跡形もなく消えていた。
全ては翔太が顔を伏していた間の出来事である。
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