奈落の底から映画評

しおまねき

『看護婦日記 獣じみた午後』(1982年/日本)


監督 黒沢直輔

脚本 宮田雪

出演 風間舞子、美保純、川村真樹、山地美貴



 1982年に公開された、にっかつロマンポルノ。この映画を一言で表現するなら「変な映画」だ。


 夢を記録することができる装置“ドリームリング”をめぐり、愛欲と怨念が渦巻く病院に入院する羽目となったヒロインがその渦中に巻き込まれてしまう。

 あらすじを簡単にまとめてしまったが、実際の中身はポルノであることを除けば、ジャンルごちゃ混ぜ分類不能。SF、ホラー、サスペンス、ファンタジー、コメディ、百合の闇鍋状態。このなかで最もウェイトを占めているのはコメディだが、演出は異様なほど淡々としていて、あまり笑えない。

 それは見せ場であるエロシーンも同じで、例えば、美保純が淫夢を見るシーンではシュールなイメージが大量に盛り込まれ、まったくエロくないし、クライマックスの男2女2のカラミに至っては、人間の肉体を使ったアートなオブジェを見ているようで逆に感心してしまった。夕方という設定ゆえ、夕日を模した薄暗いオレンジ色の照明が肉体を照らし、シュールさを高めている。


「それって映画として、ポルノとして面白いのか?」と問われたら、面白いわけではないのだが(おい)、それでも観てしまえるのは「これ、ふざけてるんじゃないの?」と思いつつ、前述の演出、シュールなイメージ、ムチャクチャなストーリーから「いや、もしかしたら、深いテーマがあるのかもしれない」と勘違いさせ、気付けばエンドマークとなっているからだ。まぁ、結論としては「やっぱ、ふざけてんじゃねぇか!」なのだが。


 しかし、変な映画を見たという満足感はあるので、なんやかんやで楽しめたのも事実。また、「エロシーンさえあれば、なんでもあり」という日本のポルノ、ピンク映画の自由さも堪能できる。

 エロ目的で期待に胸と股間を膨らませ、日活の映画館へやって来た当時の観客が本作を見て何を思ったのか、想像するのもまた一興。




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