エレフセリア
夢咲リベラ
第1話
その夜、私はいつもと違う高揚感に包まれていた。ネットで見つけた儀式の手順を、好奇心だけで実行結果がどうなるかなんて、考えもせずに。
床に描いた奇妙な模様、灯したロウソクのゆらめき…薄暗い部屋に漂う不思議な香りと静けさが、じわりじわりと肌にまとわりつく。心のどこかで
「これがうまくいけばいいな」
なんて、ほんの少しだけ期待していた。
「……これで、いいんだよね?」
半ば疑いながらつぶやいたその瞬間、部屋の空気が突然変わった。重く、ひんやりとした空気が流れ込み、まるで部屋に何かが入り込んだかのような感じがした。肌に鳥肌が立つ。
視線の先に、薄暗い闇が渦巻き、そこから小柄な影が現れた。水色のメッシュの入った白髪に、異様に整った中性的な顔。特徴的な紫の瞳が、ロウソクの炎に揺らめいている。
「こんばんは。」
軽やかな声とともに、その影はふわりと現れて私に微笑んだ。子供みたいな小柄な姿だけど、ただの人間ではないと一目でわかる。不思議と恐怖は感じなかった。むしろ、何かに引き寄せられるような感覚がした。まずは自己紹介でもしてみようかな….?
「……えっと、透空…私は八神透空っていうけど…あなたは?」
緊張で声が裏返りそうになるのを抑えながら、私は名乗った。すると、彼女はふわりと笑みを浮かべて「僕の名前はリベラ。よろしくね〜」と名乗る。その瞬間、胸の中にざわめきが広がった。これまでの平凡な毎日が、彼女によって一変する。そんな期待で私の胸の中はいっぱいだった。
こうして、私の日常に「非日常」が滑り込んできた。
リベラが現れてからというもの、私の日常は急速に変わり始めた。彼女はまるで当たり前のように、私の部屋でくつろいでいる。私が何かを問うと、気まぐれに返事をしては、それ以外のことは口をつぐむのだ。あの夜のことだって、何がどうなってこうなったのか、結局何も教えてくれなかった。
「まあ、気にしないでよ」
と言うばかりで、あとは楽しそうに読書をしている。
ある日の放課後、帰宅してみると、リベラが窓辺で外を眺めていた。その姿は、小柄で無邪気に見えるけれど、どこか遠い場所を見つめているようだった。
「リベラって、どこから来たの?」
思い切って尋ねてみた。
「さあね。君には関係ない場所だと思うよ。」
軽く肩をすくめる彼女に、私はなんとも言えない感情を感じた。
リベラと出会ったその日から、放課後の帰り道で何処からか視線を感じるようになった。それ以外にも、どうにも妙な出来事が増えた気がする。まるで私を何者かが見張っているような、そんな気配だ。
「…おかしいな、誰もいないはずなのに…」
振り返るも、そこには人気がない。ただ薄暗い路地が静かに広がっているだけ。胸騒ぎが収まらないまま早足で家に帰ると、リベラがいつもと変わらない笑顔で出迎えた。
「おかえり、透空。」
その笑顔に私は少しホッとしながらも、どこか胸の奥に言い知れぬ不安が残った。
もしかしたら、これが“特別”な日常への第一歩なのかもしれない。
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