第36話 クラーラ・リンフィールド野生聖女勲章!
謁見の間崩壊事件は、私が特に言い訳しなくても、悪ノリした王様や軍人たちの責任ということになった。
私は無罪放免。お父様と一緒に実家に帰る。
そして久しぶりの自分のベッドにダーイブ!
ああ、これこれ。やっぱりこれが一番落ち着く。
それにしても、一年も留守にしていたのに、ホコリ一つ落ちてない。
メイドさんたちにお礼言わなきゃ。
「私がいないあいだも、ちゃんと掃除してくれて、ありがとうございます」
私が頭を下げると、メイドさんたちの頬を涙が流れた。
「お嬢様が生きて帰られた! 信じて待っていた甲斐がありました!」
「しかも、こんな元気な姿になられて……」
「顔色がよくなり、表情に生気がみなぎって、美少女っぷりに磨きがかかっています!」
私との再会を泣くほど喜んでくれるなんて……私もホロリとしてしまう。
そしてお父様と晩ご飯を食べる。
「ク、クラーラが私の目の前で御飯をモリモリ食べている……感動的だぁぁぁ!」
お父様は号泣する。死んだと思っていた娘が一年ぶりに帰ってきたから、仕方ないよね。
あと行方不明になる前の私は小食だった。それがちゃんと、育ち盛りの子供っぽく食欲旺盛になったんだから、感動しちゃうよね。
「クラーラぁぁぁ、明日も明後日も一緒に御飯を食べてくれるよなぁぁぁぁ!?」
「はい。いいですよ」
「うぉぉぉっ、やったぁぁぁ! 一生一緒にお父様と一緒に御飯を食べようなぁぁぁ!」
「一生一緒は無理です。私、冒険者になるので」
「やだぁぁぁ! 冒険者にならないで、ずっとこの家にいてくれぇぇぇえええっ!」
「国王陛下の前で誓ったじゃないですか。私が冒険者になるのを認めるって。まさか反故にするつもりですか?」
「誓った。認めた。反故にはしない。だから、これは強制ではなくお願いだ……お父さんと一緒にいようよぉぉぉっ!」
「……泣き落としは通用しませんよ」
私は冷たい口調で言う。
実は結構グラッときてる。だって大好きなお父様がこんなに泣いてるんだもん。一緒にいてあげたくなる。体が二つあったらいいのに。
でも私は一人しかいないし、私の人生は私のものだ。
お父様に懇願されたからって、やりたいことを我慢するのは違うだろう。
「うぅ……クラーラとずっと一緒にいたいよ……うぇぇぇん」
ガチ泣きだ。
私との別れを悲しんでくれるのは嬉しいけど、男爵家の当主としていかがなものかと思いますよ、お父様。
そして次の日。
なんか王様が直々に私の実家にやってきた。
「本来であれば勲章の授与は謁見の間で行うべきだが……謁見の間が消滅してしまったので、直接持ってきた」
お手数をおかけします。
お父様が「我が家に陛下が……凄い!」とか興奮している横で、私は王様から二つの勲章を頂いた。
一つは昔からある国家功労勲章。カラフルなメダルだ。いかにも勲章って感じ。
もう一つは――。
「これが今回のために新しく定めた勲章だ。その名を……クラーラ・リンフィールド野生聖女勲章!」
「おお……って、えええええ!?」
なんつぅ名前だ。
しかもこの勲章、女の子がドラゴンの首にかじりついてる絵が刻印されてる。フルカラーで!
この女の子、確実に私だよね!? デフォルメ上手だな!
「なぜ私の名前と顔を使ったんですか! しかも野生聖女って……!」
「野生の聖女は、この辺りでは強さの代名詞になっている。だから『ああ、この勲章は強い人がもらう勲章なんだな』と誰もがすぐ分かってくれる」
「だからって顔を描くことはないでしょう! しかも暗黒竜らしきドラゴンに噛みついてるなんて……」
はしたないですわ。
「野営の聖女といえば、暗黒竜を捕食する少女、というのが民の共通認識だからな。これ以外のデザインはありえんよ」
「共通認識!? どうしてですか! 野生の聖女は化物みたいな姿って思われていたはずですけど!」
「君が王宮に来る前はそうだった。しかしリリアンヌと一緒に貴族たちに挨拶をしても回っただろう? それで野生の聖女は美少女だと広まってな。それと、悪霊と戦う剣聖ハロルドに助太刀するところを見ていた者も結構いるのだ。極めつけは、謁見の間崩落事件。あれで君のファンになった者が多い。家に帰って妻や子供に語り、そこから話が広まり……いまや王都の井戸端、酒場、喫茶店、高級クラブ、パーティー会場……あらゆるところで野生の聖女がどんな美少女だったか、それぞれ勝手に語っている」
勝手に語っちゃってるんですか。
「なので、野生の聖女が実際はどんな容姿なのか、みんなに教えてやろうと思ってな。謁見の間が崩落したあの現場に、芸術肌の貴族がいた。その彼に金型を作らせ、勲章を鋳造したというわけだ」
というわけだ、じゃねーですよ!
謁見の間を壊したの昨日だぞ。なんで昨日の今日で完成してるんだ。才能の化身か。
「いや、でも……この勲章を持ってないと、私の絵を見られないじゃないですか……」
「うむ。だからマンホールのデザインにも採用しようと思っている。もちろん、そっちもフルカラーだ! 暗黒竜だけでなく、ゴブリン・ロードやサラマンダーを捕食しているところなど、様々なパターンを作りたい。人々はマンホール見たさに王都のあちこちを巡る。それによって往来が活発になり、経済効果が生まれるだろう」
ご当地マンホールによる町おこし!
そういえば王都って下水完備されてたもんね。
この前、一人で王都をウロウロしたときマンホール見かけたわ。
あそこに私の顔が……恥ずかちぃ。
「あんまり目立ちたくないんですけど……」
「えッ! 今更ッッッ!?」
王様は目を丸くした。心の底から驚いたという表情だ。
それを見て私は、なんか色々手遅れなのかな、と落ち込んでしまう。
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