第9話 敵が強いってことは技術を盗めるってこと!

 いったん逃げる。音速猪突で距離を取る。

 うわぁっ、追いかけてきた。

 音速猪突をやめたら追いつかれそう。連続で音速猪突だ!

 目の前に木が! でも音速猪突は直進しかできない!

 聖女パンチで木を粉砕。

 反動でちょっと減速しちゃった。

 距離を詰められた。

 ええい、逃げ回っても成長には繋がらない。

 私は一日二十回以上死んでもセーフなんだ。恐れず立ち向かえ。


 全身を防御障壁でガチガチにガード。

 振り向きざまに真空斬。

 背後にいた骸骨はそれを余裕で回避した。

 私はその動きを目で辛うじて追えた。

 長い狩猟生活のおかげで、私の動体視力がよくなったのかもしれない。


 しかし目で追えるからといって、体が追いつくとは限らない。


 骸骨が振り下ろした剣が、私の脳天に迫る。

 それを棒でガードしたいけど、まるで間に合わない。

 身を捻って、頭部への直撃は回避した。けれど肩に剣が激突。

 防御障壁がなかったら、確実に腕を切り落とされていた。

 でも防御障壁があるから平気だよーん……なんて言っていられない。

 刃は皮膚に達しなかったけど、衝撃は伝わってきた。全身がビリビリする。何度も打ち下ろされたら、障壁の上からでも骨にヒビが入りそう。


 この骸骨……さっきのより圧倒的に強いぞ。

 こいつと剣で互角に戦えるようになれば、そこそこの剣士になれるのでは?

 とにかく集中。

 敵の動きを観察する。

 斬撃がまた来た。棒で防ぐ……なんとか成功。

 でも次の攻撃はまともに喰らってしまう。


 骸骨は全ての動作が美しく繋がっている。

 一つの攻撃は、次の攻撃の布石なのだ。


 対する私は、でたらめに棒を振り回しているだけ。

 技術も読みもなにもない。

 もし防御障壁がなければ、一分間に百回くらい殺されてる気がする。大げさではなく、マジでそのくらい速い。

 こんなのと互角に戦おうなんて無謀すぎたかな……。

 いや、始めたばかりだ。諦めるのは早い。

 日が暮れるまで頑張るぞ。


 そしてアッという間に日が暮れてしまった!

 何時間戦ったんだろう?

 ちょっとは防げる頻度が増えた、気がする。

 上達したんなら嬉しいな。

 でも今日はもう疲れちゃった。続きは明日。


「ダークミスト!」


 目くらましに黒い霧を広げる。そして音速猪突で逃走。

 メッチャ離れてから、寝る。

 疲れていたせいか、目を閉じた瞬間に意識が落ちて、気がついたら朝だった。


 棒を担いでウロウロ。

 骸骨さーん、どこですかー。

 この辺だったと思うんだけど……別の場所に移動しちゃったかなぁ?


「……いた! 勝負です!」


 昨日は防戦一方だったから、今日は私から積極的に攻めるぜ。

 うおおおおおおおっ!

 あ、駄目だ、簡単に受け流されてしまった。

 悔しい。でも頑張る。


 私は何日も何日も骸骨に挑み続けた。

 やがて、防御に徹すれば、骸骨の斬撃をほぼ完全に防げるようにまでなった。

 私、偉い。

 けれど、それも防御に徹すればの話だ。色気を出して攻撃に転じようとした途端、骸骨の鋭い斬撃が襲い掛かってくる。


 落ち着こう。

 確実に上達はしているんだ。

 焦らずに骸骨を観察。

 パクれるところは全てパクれ。

 なにせ相手は骸骨。関節の動きがよく分かる。スケスケだぜ。


 打ち込むときの足裁きが私と違う。上半身のブレが違う。腕のしなやかさが違う。もう全部違う。

 私が上達したからこそ、互いの違いが分かる。

 つまりパクればもっと上達してパクれるところが増えるってわけだ。

 うひょおおおおっ、たっのしぃぃぃぃっ!


 防御、防御、防御!

 斬撃、防御、防御、薙払、防御、防御、防御、刺突、斬撃、斬撃、斬撃!

 お、私、攻めてるぞ……あ、駄目だ、また向こうのペースだ! うわああっ、防御防御防御防御防御ぉぉぉぉぉっ!


 防防防防防防防防防防防防防防防防防防防防斬防防防防防防防防防斬斬防防斬薙斬斬突払斬斬斬防防防防防斬斬斬防防防防防防防防防防防防防防斬斬斬防防防防防防防防防防防防防防防防斬防防防防斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬防斬斬斬斬薙斬斬刺刺刺刺防防薙斬斬斬斬斬斬斬斬!


 あと少しで勝てる気がする!


 敵の斬撃を防御! 弾く! やった骸骨の体勢が崩れた……違うフェイントだ。踏み込んだらやられる。だから敢えて一歩引く。よっしゃぁ、骸骨の剣が空ぶった。私は剣を振り下ろす。骸骨はその衝撃に耐えられず剣を離してしまう。


 今だ! 全力! フルスイング! 横一文字に薙ぐ!

 頭蓋骨にクリーンヒット!

 砕いたぁぁっ、木っ端微塵っ!


 頭部を破壊された骸骨は力なく倒れた。そこに脳があるわけでもないのに。


「か、勝った……っ!」


 ガッツポーズ。

 スマホがあったら記念写真を撮りたい。

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