吟遊詩人
〇たき火、弦楽器の音
吟遊詩人「おや、こんな夜更けに人とは珍しい。
貴方も旅をしているので?
・・・私は見ての通り、しがない吟遊詩人ですよ。
今日は満月が一段と美しい・・・ここでなら歌も映えると思いまして
ね。
ああ、どうです?
一曲お聞きになりませんか?
なに、お代はいりません。
こんな素敵な夜に、それは無粋というものです。
そうですね・・・魔王になった少年の物語を歌いましょうか。
おや、物騒な?
・・・果たしてそうでしょうか?
時も時代も変わり、巡り、歩む日々が、優しさも悲しみも怒りも生
み出すのです。
ようは歌い手の手腕一つで物語は変わるものですよ。
そうですね・・・それでは優しく歌いましょう。
優しい優しい物語。
魔王になった少年の優しさを」
〇朗読、または歌ってください
吟遊詩人「少年は知っている。
人々が笑い合い、木々が美しく煌めいている日々を。
少年は知っている。
ただの暴力が全てを壊してしまうことを。
少年は知っている。
優しいだけでは何も守れないことを。
ゆえに、
少年は魔の手を取った。
悲しみも怒りも飲み込んで。
魔を振るい、仲間を得て、ついには無能なる王を討つまでに強くな
った。
少年は知っている。
恐ろしいのは自分自身ということを。
少年は知っている。
魔が己を覆い尽くさんとしていることを。
少年は知っている。
人々も自然も、優しさが希望であることを。
ゆえに、
少年は魔王となった。
優しさと微笑みを携えて。
魔を振るい、国を統治し、ついには誰も逆らわなくなった。
木々が美しく煌めいている。
人々が笑い合い生きている。
魔王は優しく静かに王座に座るのであった」
〇朗読、歌終了
吟遊詩人「ご静聴ありがとうございました。
まだまだ未熟者ではございますが、少しでも少年の、魔王の優しさ
が伝われば幸いにございます。
・・・ええ、この国の成り立ちにございますね。
子供から大人まで誰もが知っている物語。
私が歌うとこうなります。
・・・おや、貴方も歌いになるので?
それはいいですね、ぜひお聞かせください!
歌は千差万別。
歌い手によって変わるもの。
貴方の物語はどんな歌になるのでしょうか」
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