第105話【SS】突撃女の男友達【ヒロ】

頭が働くとは、どういうことをいうだろう?







脳科学において乱暴に極論すれば、脳細胞同士を繋ぐシナプスに電流が流れることである。


でだ、


シナプスに電流が流れる最たるものとはなにか?


それは、自分の発言に返事をもらった瞬間である。この時に、最も大きな電流が流れる。


さて、


裏路地で膝を抱いてうずくまるカズ友達は、父親の暴力に怯えている。


ちょっと、お話しに行くか。


ここで断っておく。


俺は、カズの父親どころかカズのことさえよく知らねえ。


なにも知らねえやつが首を突っ込んで説教する? アホかって言いたい。俺にはカズにもカズの父親にも説教する資格はねえ。


だから、カズとカズの父親のことを良く知ってるやつに頼る。


カズとカズの父親のことを良く知ってるやつとは誰か? カズの母親? 違うね。カズとカズの父親本人さ。この2人がカズとカズの父親のことを一番良く知っている。




俺は、アホだ。




だから俺は会話によって、カズとカズの父親の脳を働かせて、自力でどうすればいいか考えてもらう。


もちろん、俺も出来る限り考えるが、カズとカズの父親以上に、カズとカズの父親のことを知ってるわけじゃねえ。ゆえに、カズとカズの父親以上に良い考えが浮かぶなんて自惚れていねえ。俺ってアホの上にバカなんだよ。悪いか




ただ、カズとカズの父親の言葉に、素直に返事する。




それを出来るだけ数を重ねる。


疲れたら休んで、時には日を変えて、ただただ一緒に居て、会話をする。


俺がカズ友達にしてやれることなんて、この程度のことだ。俺って、ちっせえなあ


だが、効果はてきめんだ。


魔法のように、一瞬で変わるなんてことはない。


だが、日に日に、カズとカズの父親の脳が働き出すのを感じる。いいぞいいぞ


さすがに毎日は無理だが、放置もしねえ。定期的に顔を出して、話す。


2ヶ月くらいで改善の兆しが見え始めた。半年も続けると、カズとカズの父親の生活習慣が変わった。そして、1年が過ぎた────。


カズとカズの父親は、すっかり変わった。良い方向に。具体的には、カズとカズの母親が、父親から暴力を振るわれることが一切なくなって、それどころか仲直りした。過去のわだかまりもないようだ。やれやれ、ホッとしたよ


カズは、「ヒロさんのおかげです」なんて言うが、それは違うぞ。


カズ、お前とお前のお父さんが、自分で自分を変えたのだ。そこを間違えるなよ? すごいのは俺じゃねえ、お前とお前のお父さんだ。俺はただ、おしゃべりしただけだぞ。




ああ、それから、




お父さんと仲良くな。




最近のお前、輝いてるぞ。まぶしいくらいのイケメンだぜ。


────────────

【あとがき】

ありがとうございます。読んで頂けて嬉しいです。感謝しています。

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