まつげの先の虹

 雲一つない昼下がりだった。

 待ち合わせの公園でベンチに座り、汗で蒸れたキャップを脱いだ。

 頭上から照りつける日差しに目を細めると、視界の上にキラキラした粒が横へ並んだ。まつげの先が太陽から受け取った光を反射させているのだ。

 片目をつむって一つ一つをじっと観察すると、ある部分に虹がかかっていることに気づいた。虹はある角度になると現れて、またある角度になると薄くなる。

 僕は七色が鮮やかになる角度を見つけては、後ろの景色と重ねてみるという遊びにしばらく熱中した。

 その目で表通りを見つめていると、つばの広い麦わら帽子をかぶった女の子が歩いてくるのが見えた。日陰のできた涼しい顔がこちらに気がついて瞳を大きくした。

 彼女は裾の長いノースリーブのワンピースを着ている。虹は透き通りながら、その白い生地を染めていた。

 片目を開いてしまうのが少し勿体ないと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る