第31話:教育機関の開業は計画的に

さて、まずは学校を作るところから、というわけにはいかない。


建物を作るにも資源と人手が必要だ。


そう考えると既存の施設を改装するほうが現実味があるだろう。


「そんなわけでパパに相談です。寝室の1室を私に下さい。」


「ん?いいぞ?しかし学校かぁ。懐かしいな~。」


「え?パパは学校に行ったことがあるの?」


「おう、あるぞ~。この領地はパパやママが子供の頃は今ほど安全じゃなかったからな。大きくなるまでは王都に住んでいたんだ。」


はじめての事実だ。


そうか、私達の世代の前までは王都で子育てを行っていたのか。


現在でも小さい子は家から出さなかったり親が過保護なくらいついてくるのはそういうことか。


じゃあ王都の話は父上から聞けばよかったのでは?


「さすがに十年以上前だからな~、私も最新の情勢には詳しくはないよ。行くとしてもお城とあっちにある別荘だけだからね。」


別荘!そういうのもあるのか!


そうか、よく考えてみると家はそこそこの貴族!いいところのお坊ちゃんだった!


「その話もっと聞きたい!」


「お?そうか?じゃあちょっと昔話をしようか。」




「あれは、そうだな、王都で過ごして7年目の夏のことだったかな?」


あの頃は、賢者様がまだ現役の頃でね、王都全体が技術的な進化を遂げようとしていたんだ。


私達田舎者は特に馬鹿にされていてね、よく賢者様がかばってくれたものさ。


「やい!田舎者のスヴェン!今日こそ剣で勝負だ!」


「え~いやだよ。なんだよ何でも言うことを聞くって。」


「なんだと!?王子であるこの俺の言うことが聞けないっていうのか!」




「まって。」


「うん?どうしたカノイ?」


「王子様?」


「うん、第五王子のシリウス様だね。」


「偉い人?」


「国で6番目に偉い人だね。」


「……えー?」


「ははは、これでも辺境伯だぞ?関わる貴族は限られるさ。」




そうして、友人のシリウスと喧嘩をしていると賢者様が来てね?


「ラブコメの波動がする!?じゃなかった、シリウス様、スヴェン様、お茶を入れましたのでティータイムにしましょう?」


「はーい!賢者様!フィナンシェはありますか?私大好きなんです!」


「……はーい、しょうがないな。今日は決闘はお預けだ。」


そうして、賢者様が仲裁に入ってくれることで、私とシリウスは普通に会話することができたんだ。


いつも、あの方には迷惑をかけていたなぁ。


「そういえば、お二人は最近学校に通い始めたとか。楽しめていますか?」


「うん!楽しいよ!自分より強い人がいっぱいいるし、魔法はうまくできないけど、見ているだけで楽しいんだ!」


「えー……剣も魔法も習ったことばかりでつまらないよ、そんなことよりも賢者様の話を聞いているほうがよっぽど楽しいよ!」


「あらあらふふふ、シリウス様、ありがとう。でも、学校でしか出来ない青春ってものもあるんですよ?」


「「青春?」」


「そう、例えば……新たな出会い!意見の対立!甘酸っぱい恋!」


「新たな出会いか~。」


「甘酸っぱい、恋。」


「はぁ、青春、懐かしいわ~。私が若い頃はそれはもうモテモテで……。」


「あーまた始まった、賢者様の昔話。」


「長いんだよな、面白いけど!」


そんなこんなで賢者様の長話を聞きながら、楽しい学校生活に思いをはせたものだよ。




「そうして、理想通りの楽しい学園生活を送った後にシリウスが降嫁してシシーとして私に嫁入りすることになったんだ。」


「まって。」


「どうしたカノイ?」


「ママが、シリウス様?」


「そうだぞ~。ママは王族だったんだが、何故か私に惚れ込んでいたらしくてな?卒業する頃には今のシシーになっていたよ。」


「……おうぞく?」


「王族。」


「王子?」


「まぁ遠縁ではあるが、そうだな。」


おうじ、王子!?


結構な重要機密なんじゃないのかそれは!?どうしよう暗殺とかされるのかな!?


「ははは!安心しろカノイ!王子といっても継承権は無いに等しい。余計なごたごたに巻き込まれる可能性は低いだろう。」


「そ、そうかなぁ。」


絶対何かしらに巻き込まれる気がするんですが?


カノイ・マークガーフ、7歳、衝撃の事実をサラッと告げられた夏の出来事である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る