第44話 再戦
私の前に姿を現した巨大なハサミ。
そのハサミはパックリと口を開いていて、人の身体すらいとも簡単に真っ二つにしてしまおうというような意思を持って襲ってくるかのような恐ろしさを醸し出していた。
「ひぇっ……ぇえッ!!」
私は恐怖と死の狭間の中、それでも打開したいという必死の焦りで、全身の魔力と精神の回路を活性化させた。
シュパン――ブチィッ!
「うぎゃぁぁぁ……ぁああ……あああああああああああああああああああああああ」
私の右足に生まれてきてかつてない程の痛みが走る。
起死回生の回避によってなんとか肉体を真っ二つにされることは防ぐことはできたものの、すぐに私は地面に転げ落ちていく。 右足をハサミで撥ねられてしまった。
「あぁぁああっ、あぁ、痛い、痛いいぃぃいいぃいいいい!!」
惨めな声で泣きわめくオランチア。 ハサミはすぐにオランチアの肉体を今度こそ真っ二つにしようともう一度口を大きく開け、飛び掛かってくる。
「そこまでですわ!」
「トリプル・シャーベットッ!!」
「後輩に気安く触れんじゃねぇぞウォンン!!!!」
三人の攻撃がハサミに向かって飛んでいく。
その威力は凄まじく三人分の魔力が合体したものとなった。
「きゃッ!!」
魔法弾はハサミにぶつかると大爆発を起こして弾け飛んだ。 ハサミの持ち主にも攻撃が当たったのか相手の体勢を一気に崩すことができた。
――痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
右足が飛んでいき、ジタバタともがき苦しむ私の前に三人はすぐにやってくる。
ドコニは切り飛ばされた私の右足を持って来て、何か詠唱を唱えた。
「ヒーリングクライスッ……!!」
【治癒の輪】
ドコニの使うことができる魔動技で破損した部位を元のものとして結合することができるらしい。 私の使うことのできる回復系の魔動技なんかよりも遥かに高度な技らしいが、結合する時の痛みも想像を絶するものであった。
「うぎぇぇ、えええぇ……ぇえええええええええ!!??」
――激痛。 私にとって、人格が歪み掛けるような恐ろしい出来事であり、リベアナに殺されかけた時のものよりも酷い嫌悪感を感じてしまった。
「おい! 二人ともォ敵がそこにいるぞォ!!」
ドコニはすぐそこにいると思われる敵の影を目掛けて攻撃の構えを取る。
アリシアとマスカリーナも魔動技を使う詠唱を始めた。
「ちッ、仕留め損ねたか……。」
影の中から飛ばされた本体が姿を現す。
その姿は私にとって前にも会ったことがあるあの女の子であった。
女の子は吹き飛ばされて壊れたハサミを取りには行かず、また新しいハサミを召喚させて、立ち上がった。
「よく見たらあなたでしたか……。 お久しぶり。」
右足と結合はできたものの痛みで未だにまともに立てないオランチアの方を見ながら、その子は私を睨む。
「ミャウ……。 まだ生きてたんだね……。」
見た目は美少女だが、関わりたくない相手――
まさに彼女のような娘に相応しい言葉であろう。
「畜生……!! 絶対に人形にして××してやるゥ!!」
オランチアは痛みの中で彼女に憎悪を向けた発言をする。
あまりの痛みで我を失いかけていた。
「あら……。 下衆な言葉を発する魔法少女なのですね。」
ミャウの構えるハサミの武器はその大きさに反して非常に素早く動かすことができる。 そのため、彼女が飛び掛かってきたらすぐに回避か反撃の動作をしなくては真っ二つでお陀仏だ。
「こいつぁ動きが速いねぇ。 だがぁわての迅速な対応には敵わないんだわな!!」
ドコニの攻撃速度は物凄く、早くミャウの次の攻撃が来る前に間合いを詰めて一瞬で攻撃を当てる。
「ぐひぇッ!?」
その小さい身体で防御を構えたが、それでもドコニの攻撃を完全に防御することはできなかった。 ミャウは思いっ切り吹き飛ばされて壁を突き抜けていった。
「どんなもんだ!!」
ドコニはミャウを倒してすぐに戻ってくる。
オランチアがまだ痛みに動けないことを心配しに駆け寄ってくれた。
「しっかり立てよ。 治癒はまだ続けてるから少しずつ痛みは治ってくる。」
確かにさっきの壮絶な痛みは治まり始めてきている。
これなら、少しは歩くことができそう……。
「はぁ……。 ありがとう……ドコニ先輩……。」
オランチアはやっと上手く立てるようになると近くから唸り声のようなものが聞こえてくる。 この声はどう考えても魔獣だ。
「ぅ……後ろッ!!」
マスカリーナはすぐに後ろを振り返えった。 他の三人もすぐに何かの気配を察して振り向く。
「グガァウァァアアアアッ!」
そこにいたのはカプセルの中で媒体されていた魔獣である。
他のカプセルからも大量の魔獣が飛び出て来ており、どうやら意図的に孵化したようだ。
「くっそォ!! こんなに大量に……!! 罠か!!」
またかと言わんばかりに増えていく敵。
四人が新しい敵に手を焼いていると、壊れた壁の中からミャウが姿を出した。
彼女は頭から血をダラダラと垂れ流しており、相当痛みで疲労しているが、まだ戦う意思が残っているようだ。
「ふふふ……。 まだ戦いは終わりじゃない……。 ここからだ……。」
彼女は何かまだ奥の手があるかのようなオーラを私達に見せつける。
一体何がこの先、待ち受けているのだろうか……。
「うゎお……。 めっちゃ派手に戦うじゃん。 そろそろ私も戦いに参加すっか……。」
私たちが魔獣に囲まれてピンチに追い詰める中、誰かが物凄い殺気を震わせながら、奥の地下通路から現れる。
その姿も前にあったことのある人物であった。
金髪のロングヘアが似合う女性だ。
「お……お前はッ!!」
「あー よく見たらあの時の街の奴らか……。 結局私の忠告は無視したわけか……。 まあいいや。」
金髪の女性は私達の方に近づいていき、冥土の土産と言わんばかりにライトサーベルと言われる剣を取り出す。
「私の名前はビアンコ・イーシュリン。 組織のボスの娘であり、最高幹部の一人。 グランドストリートに攻め込んだことを後悔するがいい。」
これはヤバい……。 何としてでもここを切り抜かなくては……。
私はステッキを振りかざし、魔獣とビアンコがいる方に魔法攻撃を仕掛ける詠唱を始めた。
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