トゥルースとカリスマ2

 トグサはもう用は済んだというように、メグリダの首をかき斬ろうとした。メグリダは途端に大声で叫んだ。


「まっ、待ってくれ。お前の仲間の魔法を解除する。だから命だけは助けてくれ!」


 トグサはしばらく考えるそぶりをしてから、小さくうなずいた。メグリダがホッと息を吐く。


 トグサはコジモに声をかけてエリオを起こすように指示した。コジモのかけ声により、エリオはパチリと目を開いた。


「ああ、もう朝か?よく寝たなぁ」

「何をのん気な事言ってるのよ!」


 何事も無かったように大あくびをするエリオに対して、デイジーは怒った顔で返した。


「エリオが勝手に行動したから、あたしたちが危険な目にあったんだからね!?」

「でも、デイジーたちが何とかしてくれただろ?」

「も、もちろんよ。当たり前じゃない。エリオのミスをフォローするのが仲間のあたしたちの役目だもの」


 エリオの穏やかな表情に、コジモは笑ってデイジーの肩をたたいた。


「そうだよ。エリオが突っ走ってしまうのはいつもの事だよ。最後はトグサがきっと何とかしてくれるもの」


 パティはエリオが元に戻って心から安どした。そして、デイジーたちがとても信頼している仲間である事をあらためて感じた。


「な、なぁ。約束通り仲間の魔法は解除した。俺さまを見逃してくれよ、」


 メグリダは探るようにトグサの表情を見た。トグサは顔色を変えずに答えた。


「命は取らないと言ったが、解放するとは言っていない。お前は罪もないたくさんの人間を殺したんだ。罪は償わなければならない」

「そんな事言うなよ。俺さまは人なんて一人も殺していないぜ?やったのは操っている部下たちだからな」

「部下を操ってお前が殺させた。お前が殺したも同じだ。お前は《カリスマ》という魔法を正しく使っていない。《カリスマ》とは良い指導者が持つべき魔法なのだ」


 トグサはジッとメグリダの目を見つめてから口を開いた。


「ほう、貴様は子爵家の長男だったのだな。ご両親は貴様におおいに期待した。だが、その期待は裏切られた。貴様よりも優秀な弟を子爵家の跡取りにしたのだな。それをひがんで盗賊の統領になるなどと、ご両親は自責の念にたえないだろう。何故貴様を屋敷の中に閉じ込めておかなかったのだろうと、」

「ち、父上、母上。違うのです、私は、私は、ただ貴方たちの期待に答えたかっただけなのです、」


 メグリダの様子がおかしくなった。ブツブツとひとり言をつぶやいている。パティが不安そうに見つめていると、デイジーがパティの肩を抱きながら、困った顔で言った。


「パティ、悪い事をすれば、必ず自分に返ってくるの。メグリダは最初の罰を受けているわ」


 デイジーの言葉に、パティは黙ってうなずいた。


 

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