パティの願い2

 パティはジョナサンを真剣な目で見つめて言った。


「あのね、神父さま。チコリおばあちゃんを元気にしたのは、マックスたちなの」


 ジョナサンはポカンと口を開けたまま固まった。ジョナサンの目にはチコリは明らかに若返っていた。


 パティのお願いにジョナサンが感じた思いは、単純に喜びだった。パティはジョナサンに長生きしてほしいと心から願ってくれているのだ。


「パティ、」


 ジョナサンは愛しい養い子の名前を呼んだ。パティはジョナサンがこの提案に否定的だと感じたのだろう。早口になって説明した。


「チコリおばあちゃんは今もとっても元気よ?!それにね、マックスたちは神さまからの授かりもの。だからマックスたちの魔法は神さまのご意志だと思うの!」


 確かに神から授かった魔法は、基本的に人の為になるものだ。ジョナサンの心は動いた。もしパティの提案を受け入れなければ、ジョナサンはパティに二度と会えずに死んでしまうだろう。


 ジョナサンはパティの成長した姿が見たかった。ドミノ村でのパティの暮らしは、苦渋と絶望に満ちていた。パティが新しい世界に飛び出して、成長して目を輝かせたパティに会いたかったのだ。


「パティ、ありがとう。私に魔法をかけてくれないか?」


 パティはハッとした表情になり、泣きそうに顔をゆがめてから、マックスたちにお願いと言った。


 マックスとチャーミーはジョナサンの両どなりに座り、ピンキーはジョナサンの肩に止まった。パティはテーブルの上に乗っているアクアを抱き上げると、ジョナサンに抱っこさせた。


 すると強い光がジョナサンを包んだ。ジョナサンはまぶしさのあまり目を強くつむった。次の瞬間、ジョナサンの身体に明らかな変化が起きた。


 身体中痛くて仕方なかった痛みが、きれいさっぱり消えてしまった。ふらふらして今にも倒れそうだった足にはしっかりと力が入り、前屈みに曲がっていた背中がしゃきんと伸びた。


 ジョナサンは驚きの表情でパティを見つめた。パティは泣きながらジョナサンに抱きついてきた。ジョナサンは抱っこしているアクアを落とさないように気をつけながら、パティをしっかりと抱きしめた。


「神父さま!私が帰って来た時、また会ってくれると約束してくれますか?!」

「ああ、約束するよ。安心して外の世界を見に行っておいで」

「はい。神父さま、」


 パティはそれからずっと泣き続けた。ジョナサンはパティが泣き止むまでずっとパティを抱きしめていた。


 


 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る