ぼっち少女ですが魔法ガチャでレア出しました
城間盛平
パティの夢
パティは木のおけに並々と入れた水をこぼさないように慎重に歩いていた。パティが住まわせてもらっている教会には井戸がないのだ。そのためパティは朝早くから晩まで、生活に必要な水を川でくんでくるのが日課だった。
「神父さま。ただいま帰りました」
「お帰り、パティ。重かっただろう」
出迎えた老神父はそう言って、パティの手から木おけを持ち上げた。少し足がふらつく。パティは神父の事が心配で仕方なかった。
神父のジョナサンは、教会に捨てられていたパティを、実の孫のように愛し育ててくれた。パティは早く大きくなって神父に恩返しがしたかった。
神父のジョナサンはヨタヨタしながら粗末な台所の水かめに、パティのくんできた水を入れた。
身長の低いパティでは背がとどかないからだ。パティは神父から木おけを受け取ると、再び川に向かった。これを後五回は繰り返さなければいけない。
パティはもうすぐ十歳になる。パティが十歳になったら神さまから贈り物を受け取るのだ。
神さまからのギフト。それは一つだけ魔法を授かる事ができるのだ。ある者は大空を飛ぶ魔法を授かり、またある者はものすごい腕力を授かった。
パティにも一つだけ魔法が使えるようになるのだ。パティは色々と考えた。お世話になっている神父の手助けができる魔法がいいと考たりもした。だが最終的にはやっぱり同じ考えに行きついた。
ずっと側にいてくれる友達がほしい。
パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳をしていた。珍しいという事は、奇異な目で見られるという事だ。
パティは学校でも仲間はずれにされていた。無視をされるだけならまだいい。男の子たちはパティを見ると、あっちに行け忌子。といって、パティに石を投げつけるのだ。
パティはいつも泣いていた。石が当たった事も痛かったが、それよりも心が痛かった。パティの心はズキズキと痛んで悲鳴をあげていたのだ。
パティが川の水をくんで教会に戻ると、ジョナサンが夕食の支度をしていた。教会はとても貧しい。教会の裏の畑で採れたじゃがいもとにんじんで何とか生活していた。
今夜の夕食は、じゃがいもとにんじんのスープだ。パティはジョナサンの作ってくれるこのスープが大好きだった。
食べる前に神さまへの感謝のお祈りをしてから食事を始めた。パティはスプーンでスープを一口食べてから、美味しいと言った。ジョナサンは嬉しそうに微笑んだ。
パティたちが食事をしていると、トントンとドアを叩く者がいた。ジョナサンは立ち上がって、ドアを開けると村人が入って来た。
パティはイスを降りると、急いで台所に走った。身体を低くして、片目だけ出してドアの様子をうかがった。
村人は背中に子供をおんぶしていた。子供はシクシクと泣いている。ジョナサンは驚いて聞いた。
「どうしたんだ?キトリそんなに泣いて」
「神父さま。うちのバカ息子がイタズラをして、火のついた鍋に触れちまったんでさぁ」
「そうかそうか。どれ、キトリをそこのイスに座らせなさい」
村人は背負っていた息子をイスに座らせた。子供の右手のひらは赤く腫れていた。ジョナサンは子供の側にひざまつくと、火傷をしている手の上に、自身の手をかざした。ジョナサンの手が光出す。
見る間に子供の手の腫れは消えた。ジョナサンのギフトは《治癒》なのだ。
シクシク泣いていたキトリは笑顔になって言った。
「神父さま!ありがとう!」
「キトリ、もう火の側でイタズラをしてはいけないよ?」
「はい!」
村人は神父に頭を下げて、息子の手を引いて帰って行った。
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