「『俺だけ』って言ってよ」



・-・-- ・・ ・-・-・ -・- 



『もしも……し……』



『あ!もしもし、モモちゃん!観てくれた?』



『あ……当たり前じゃないですか……!!

おめでどう゛……ございま……っ』



『もー、また泣いてる。

まだリーグの初戦突破しただけなんやけど』



『その勝ち一つ……画面越しの推しの笑顔一つで、

得られる栄養素があるんですよ。

あぁ……幸せ』



『モモちゃんを幸せにできてるようで、何よりやわ』



『私だけではありません。訂正してください』



『はい。大変申し訳ありません』



『……あれ。今どこで電話してるんですか?』



『会場付近のホテルやで。明日も試合あるからなぁ』



『え。チームのみんなが居るのでは?』



『うん。みんな別室に居るよ』



『そうですか。明日も頑張ってください。応援しています。それでは早急に失礼します』



『ちょちょちょ。なんで切ろうとするん』



『みんなと居る時は、メンバーのことだけ考えてください。

チームワークの良さも、結果に直結するでしょ』



『それは大丈夫。俺ら4人、めっちゃ仲ええから』 



『ダメ。念のため言いますけど、リスナーファンと電話してるなんてこと、チームのみんなにも知られないようにしてくださいね』



『なんでよ』



『わかりませんか?

もしも配信してる理由を誤解されたら、士気に関わりますよね』



『えぇ……誤解とは?』



『口にしたくもないですが……

例えば……"出会い目的"だとか。

そんな不名誉な理由だなんて、勘違いされた日には私……』



『……どうなるん』



『潔く"担降り"ですね〜。ケジメとして』



『それは……許されへんな』



『はい。私にとっては、死ぬことより重いです』



『大丈夫やって。そんな誤解、されへんよ。

俺、めっちゃ真面目にやってるし』



『その慢心で足元を掬われないように言ってるんですよ』



『んー……とか言ってさぁ。

モモちゃんの方に、別の理由があるとか……ないよな?』



『はい?』



『た、例えば……。

俺と仲良いことを、知ってほしくないメンバーがおるとか……』



『なんの理由があって』



『やから……俺以外に……好きな奴がおるから……とか……みたいな……』



『………………』



『……あ、あれ。電話切れた?』



『……呆れて声が出なかっただけです。

私の行動のドコに、疑う余地がありましたか』



『う、疑ってはないけど……』



『確かに、チームのみんなのことを応援してますよ?

でもね……』



『うん……』



『私の中心には、ナギくんしかいないんです。

この3年間、ずっとずっとずっっっと。

世界の舞台でトロフィーを掲げるナギくんを見たいから……

そのために、心配の芽は一つ残らず摘んでおきたいんです。

他に理由はありません!』



『……すっごい口説き文句に聞こえるねんけどなぁ。

違うんやから驚きよなぁ』



『何ですか?文句?』



『……モモちゃん』



『はい』



『俺が、日本イチ……や、"世界一"獲れたら。

聞いてほしい話、あるんやけど』



『えぇ……なんのフラグ?

今言ってくださいよ』



『それやと糧にならんやん』



『カテ??……はて』



『何より、自分の中で"一人前になれた"と思えてから言いたいし』



『そう……なんですね……?

今でも十分、立派ですけどね』



『ま、とりあえず。

今は目の前のことやるだけやなぁ』



『はい。明日も頑張ってください』



『ありがと。

よし。直前練習、行ってくる』



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