6
▼
△
「全身を包むトキメキ秋風ッ〜〜〜!
あー。この瞬間、一年で一番幸せかもぉ」
「わかる。無駄に歩きたくなったりするもん。
いつもは電車使う、会社と家の一駅間とか」
「でもさぁ、言ってもまだ暑いじゃん?特に日中。
いまだに真夏と同じ格好してんだけど。
去年の10月も、こんなんだっけ?」
「トレンチコートとか、いつ着たらええんでしょうね」
「ねー。さすがに月末には涼しくなってるかなぁ」
「……いやいや先輩。
こんな、会社の休憩室でも出来るような話してる場合ちゃうんですよ」
「いやー。だって。
ここらで一旦、気持ちを平常に戻さないとさ。
胸熱すぎて溶けちゃうよ」
「すっごいですよね、よさこい。
踊りだけでもキレッキレでカッコイイのに。
曲も、衣装も、口上も、全部含めて胸熱っすね」
「やっぱりさぁ、こう……熱中してる姿って本当にカッコイイねぇ。ちょっと泣きそう」
「え……ちょっと、俺も入れてもらおかな」
「やめときな。生半可な気持ちで触れると、ヤケドするぜ……」
「いや誰よアナタ。今日はじめて見たくせに」
「うははー、感化されやすいんだよね」
「あ、休憩入るんやって。今のうちに会場回ろ」
「うん。てかさ、うちの会社の人どこにいるんだろ。全然会わないね」
「そんなことより先輩、こっちに焼きそばありますよ」
「え、食べたい!お腹すいた。
あれ?並んでるの、谷山さんと佐藤さんじゃない?」
「やっぱ後にしよ、焼きそば。
あっちの牛串とかどう?」
「……何?会いたくないの?喧嘩してるとか?」
「いいえ。絶対邪魔されたくないという強い意志」
「邪魔 #とは」
「そんなハッシュタグつけても、返信0件です」
「現代における虚しさの象徴だね」
「そんなんで推し量るなんて、先輩もまだまだお子ちゃまですね」
「なんで憎まれ口は即レスなの。
で、邪魔ってどういう意味?」
「………………」
「なぜ黙る。都合悪くなったな?」
「いや。どう考えても先輩が悪い」
「なんでよ!」
「外出するの、月1回とか言うから」
「……話の繋がりはよくわかんないけど。
別に、そうと決めてるわけじゃないよ。
ちなみに、もちろん0回でも可」
「じゃあ……俺が遊ぼって言うたら、家出てくれます?イベント以外で」
「えー。そもそも、遊びたいか?私と」
「………………」
「ほら。なんか、都合悪そうじゃん」
「ほんま……何食べて生きてたら、そんな暴力的になれんねん」
「もー。何?さっきから、よくわかんないこと言って。
ご機嫌ナナメ?なぐさめてあげようか?」
「え。何してくれるんですか」
「んーーーー。
仕方ない……私の牛串、半分あげるかぁ。断腸の思いで」
「食べ物のことしか頭ないやん。
まあ、今回はそれで許してあげますよ」
「あれ……私、何を許されようとしてるんだろ……」
▽
▲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます